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2012-10-24 00:00
在外日本人学校のかかえる諸問題について考える
金子 弘
日本学習社会学会会員
10月17日付けの本欄に中山太郎氏より「金子弘氏の『在外日本人学校生徒の安全は大丈夫か』にコメントする」との投稿があり、在外日本人学校のあり方について、「実態を見れば、日本人学校の運営は、日本国内からそのまま持ち込んだような現行の学校諸規則を緩和し、在外日本人学校は在外日本人学校らしい、より自由度を高めた、私立学校としての性格を強めるべきだ」との意見が述べられた。果してその通りなのか。もう少し「実態」を見てみる必要がありそうだ。
日本人学校には学校教育法は適用されておらず、学校教育法第1条に規定されている学校ではない。だが、外国に滞在していても、日本人の子供が日本国民にふさわしい教育を受けやすくするために、憲法の定める教育の機会均等、義務教育無償の精神に沿って、日本国内の初等中等教育学校における教育と同等の教育を行うことを目的としている。日本人学校の教育課程は、原則的に日本国内の学習指導要領に基づき、教科書も日本国内で使われているものが用いられており、文部科学大臣から日本国内の初等中等教育学校と同等の教育課程を有する旨の認定を受けていることから、日本人学校の中学部、高等部の卒業者はそれぞれ日本国内の高等学校、大学の入学資格を有している。また、現地の事情に関わる学習や現地校等との交流を積極的に進め、ネイティブの講師による英会話、現地語の学習も行われている。こうした一方で、一般社団法人日本在外企業協会の「海外・帰国子女に関するアンケート調査」によると、社員のための帰国子女教育の相談に関する担当部門を設け、相談員を置いている企業は僅か14%となっており、海外での教育については社員個人による情報収集とそれに基づく自己判断とされている。そして、日本人学校の問題点として「教育環境レベルが異なる」が21%となっており、学力レベルが懸念されている。また「生徒数規模が小さい」が7%となっていることから、日本へ帰国後の適応等も懸念されている。さらに、帰国子女教育への要望や問題点として「受入校や受入枠の拡大」が23%、「受入体制・受入制度の柔軟化」が22%となっており、日本への帰国後の教育に不安を持っていることが窺える。
こうしたことから、第一に、海外の日本人学校での教育の実態が適切に知られていないということがあるといえる。したがって、日本国内で行われている全国学力・学習調査や国際学力調査に日本人学校の子供達にも参加してもらい、その結果(例えば、国・地域別程度の精度のもの)が日本国内での教育と比較して、その教育水準がどうであるのかということを広く知ることができるようにする必要がある。また、第二に、帰国子女が日本国内の高等学校や大学の教育を受けやすくする体制をより一層整える必要もある。例えば、帰国子女を受け入れる高等学校には教員配置の際に優遇措置をとること、大学であれば帰国子女枠を設けて受け入れる大学には、助成金を多く配分する等といったこともひとつの方法として考えられる。
他方、文部科学省は在外教育施設の安全対策はセルフディフェンスであるとして、積極的な支援を行っている。しかし、海外で緊急事態が起きた場合、我が国は諸外国とは異なり、自衛隊の航空機で日本人を救助に行くことができないのは既知のとおりである。また、自衛隊の航空機で日本人を救助に行くことができるようにすることは、現時点では難しいことである。したがって、緊急事態が起こる前までに如何に適切な対策を迅速に講じることができるのかにかかっているといえる。つまり、緊急事態が起こることを前提として、平素から情報収集とその分析を行い、適切な対策を迅速に講じるという考え方が重要なのである。
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