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2012-10-29 00:00
復興予算の怪
船田 元
元経済企画庁長官
昨年の東日本大震災の復興予算として、政府は今後5年間で19兆円、1年間で3兆8千億円という、膨大な特別会計を組んだ。ところが最近になって「復興」の名前に相応しくない事業に使われているお金が、数千億円にのぼることが判明した。これは未だに被災地で苦しんでいる方々の心情をないがしろにするものである。野党がこれを追及しようとして、衆議院決算行政委員会の開会を要求しても、与党は逃げ回っているという体たらく。益々国民の政治不信は募るばかりである。
不適切と思われる予算は、例えば霞ヶ関官庁街の修繕費だとか、青少年国際交流費、被災地以外の中小企業振興費など、枚挙に暇がない。後者の振興費は、被災地の企業との関連も含まれるし、それぞれ通常予算で執行すべき大事な事業であることは間違いない。しかし、敢えて復興特別会計で執行すべきものではないはずだ。
このような珍事?が起こった原因としては、次のようなことが考えられる。まず「一般会計予算が厳しい査定を受けるため、特別会計に忍び込ませれば、予算獲得が容易になるのでは」という官僚の姑息な手段である。もうひとつは「せっかく計上した復興予算が、被災地の受け入れ体制が未だ整わないために、一部返上するよりは、流用したほうが得策」と官僚が気を利かせた結果かも知れない。
前段は誠に怪しからんことだが、後段は復興の遅れを象徴する現象として、肝に銘じなければなるまい。特に集落ごとに高台への集団移転を計画している所は400ヶ所以上に上るようだが、権利関係の整理などで5年後着工という所も出そうである。せっかく作った復興特別会計も、底をついてしまうかも知れない。政府は復興予算の適切な執行と、時間的に余裕のある執行を、常に心がけて欲しい。
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