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2012-11-03 00:00
(連載)超低金利政策は本当に有効なのか(2)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大学非常勤講師
日銀による公開市場操作を通して巨額の資金を供給することで“過剰準備”を作り出し、それが銀行の貸出しを促進するというのが通常の理論である。だが、銀行のバランスシートを見る限り、貸出し(マネーサプライ)は増えず、国債の保有残高のみが急増しているのが実情である。企業は、低金利によって調達コストが低下したからといって、借入をしてまで投資を増やす状況にはない。銀行が貸したいと思っている企業は十分な手元資金を持ち、銀行から借りたいと思っている企業はリスクが高いという理由で、銀行から資金を借りることができないのである。
また、金融政策の限界を示す言葉に「馬を水場につれて行くことはできても、馬に水を飲ませることはできない」というのがある。水を飲むかどうかは、馬が決めることである。銀行がいかに金利を下げても、過剰生産能力を抱える企業が敢えて借入を増やしてまで設備投資をするはずがない。それは白川総裁が指摘している通りである。
では、超低金利政策の恩恵を最も受けているのはだれであろうか。それは銀行で、無コストの資金を借りて国債投資をすれば労せずして巨額の利益を計上することができるのである。同じ現象が米国でも見られる。極論すれば、日銀が供給した低利の資金を使って銀行は国債を購入し、さらに銀行は保有する国債を日銀に売り、それがさらに銀行は低利の資金を使って国債を購入するという循環が起こっているのである。これは日銀による国債の“貨幣化”である。こうした循環が続く限り、政府は低利で国債を発行し続けることができるわけである。
では最大の“犠牲者”は誰か。預金者である。ウィリアム・フォード前アトランタ連銀総裁はQE3に反対して、「長期にわたる異常な低金利は利子収入に依存している年金生活者や一般の人々の生活を極めて困難なものにしている」と指摘している。さらに超低金利政策で2560億ドルの消費が失われたという試算を発表している。要するに、超低金利政策は富を家計部門から金融部門に移転させたに過ぎないのである。超低金利政策は、家計部門にとって増税に等しい。(つづく)
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