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2012-11-12 00:00
挑戦者・中国に日米はどう向き合うか
鍋嶋 敬三
評論家
11月6日の米国の大統領選挙で現職のオバマ氏が再選、中国では習近平氏を新総書記とする指導部が15日発足する。米国主導の世界秩序に挑戦者として立ち現れた中国にどう向き合うかが日米同盟関係の大きな課題である。中国の故錦涛総書記(国家主席)は8日開幕の共産党大会で「海洋強国を建設する」と大陸国家から海洋国家への変身を目指すことを宣言した。尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海での海洋覇権をもくろむ中国に対して、米国のオバマ政権はアジア太平洋重視の戦略転換と軍事態勢の再調整に乗り出した。オバマ氏は選挙戦のTV討論でアジア太平洋への戦略転換が中国の地域的影響力増大に対抗するものであることを認めている。地域をめぐる米中の確執は米国と同盟関係を結ぶ日本の安全保障に死活的な影響を与える。日本は日米同盟の強化が最優先課題だ。
中国はオバマ再選について「中国は中米パートナーシップを促進する努力を続ける」と一応、対米協調姿勢を示したが、裏を返せば「米国はもっと中国に協力すべきだ」という主張である。第1期オバマ政権は2009年の発足当初は米中戦略経済対話を立ち上げ、協調関係の構築に乗り出した。しかし、中国の排他的経済水域(EEZ)における米軍の活動規制をめぐり対立、人民元の為替操作や貿易不均衡(2011年度2950億ドルの赤字)などから対立基調に転じた。2010年7月、クリントン国務長官が南シナ海の領海紛争で厳しく対中批判、2011年にはオバマ大統領自身がアジア太平洋重視の戦略転換を発表した。経済摩擦の激化で2011年以降は世界貿易機関(WTO)への提訴合戦を演じ、イランやシリア問題でも厳しい対立が続いている。
19世紀から20世紀にかけての米国やドイツ、日本のように新興パワーは過去に対立と紛争を生んできた。クリントン長官は米国が新興・中国と付き合う試みを「海図なき領域」と評した。「既成パワーと新興のパワーが相まみえる時、何が起きるかという古来の問題に米中両国は新しい解答を見出さなければならない」。クリントン氏は米国の舵取りの難しさをこう論じた。膨大な予算を使った軍の近代化、東シナ海、南シナ海での一方的な領土、領海主権の主張、台湾の武力統一の方針維持など、中国に対するワシントンの懸念は強まるばかりである。中国と協調する一方、その軍事的な膨張と地域の不安定化に対して、米国は国防予算の大幅削減という圧力の下で対応しなければならないという相反する課題の板挟みになっている。
日本としては、外交の基軸としての日米同盟関係を揺るがさないことが第一だ。尖閣諸島について米国は、領土紛争ではどちらの立場も取らない原則を示す一方、日米安全保障条約の適用範囲であると言明している。しかし懸念もある。適用する場合、「米中対決の可能性」が指摘されていることである(米議会報告書)。それが「万が一」としても無人島をめぐって軍事的介入に踏み込むのか、予断は許さない。重要なのは日米同盟が盤石であるかどうかである。在日米軍(主体は在沖縄)は日本防衛とともに米国のアジア太平洋戦略の要である。与野党ねじれの米議会で苦境に立つオバマ政権を支えるのは、日本からの積極的な防衛、安保政策の提示である。日米安保を「アジア、太平洋地域の平和と安定の基礎」と再定義した1996年の日米共同宣言、それに基づく翌年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しから15年、膨張する中国を軸にアジア情勢は大きく変わった。日本政府はガイドラインの再見直しを米国に提起した。2003年度以降10年間減少(合計-9.4%)し続けてきた防衛予算の増額と動的防衛力構想に基づく防衛態勢の整備を急ぐ一方、新局面に対応する日米防衛協力を迅速に進めるべきである。
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