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2012-11-13 00:00
(連載)「戦後レジームの見直し」の意味を再考せよ(2)
河村 洋
外交評論家
イデオロギー的な立場を超え、時代遅れで機能しなくなったシステムを変えてゆくことには、何の異存もない。民主党リベラル派の鳩山由紀夫氏、菅直人氏、岡田克也氏らも日米同盟や霞ヶ関の官僚支配に代表される日本の戦後政治の見直しを主張したが、それによって内政が麻痺状態に陥り、日米関係も悪化しただけであった。誰が次期首相になろうとも、そうしたおぞましき誤りは繰り返してはならない。「戦後レジームの見直し」というスローガンを掲げれば、国際社会からは「日本とドイツにおけるレジーム・チェンジ」とそれに伴う民主化を否定するものと誤解されかねない。さらに、そうした誤解が広まれば、日本は欧米からもアジアかも孤立しかねない。
そこで日米関係について述べたい。ワシントン政界内部に通じたジャパン・ハンドラーなら、中国や北朝鮮といった東アジアの脅威およびアル・カイダやイランなど世界規模での脅威に対して日本が真摯に取り組む限り、保守派が望んでやまない「自主独立」にも寛大かも知れない。しかし、アメリカ人の全てがそうした考え方をするわけではない。メディアの中には、一方でアジアや中東の専制国家への対処のために日米同盟の緊密化と集団安全保障を追及しながら、他方でダグラス・マッカーサーによるレジーム・チェンジを「押し付け」と非難する一貫性のなさに、疑念を呈するかも知れない。言い換えれば、「戦後レジームの見直し」が何を意味するのかが明確でないと、それは未熟な反米史観とも受け取られかねない。そうなると日本はアジアと欧米の双方の民主国家から孤立してしまう恐れがある。戦後レジーム・チェンジの中核は平和憲法である。その憲法は国際社会に日本のレジーム・チェンジを印象づけるという歴史的役割をすでに達成したが、国際安全保障環境も変わった今となっては、そうした役割は終わっている。そうした事情から、私は憲法の改正を支持している。
戦後占領統治が良いことづくめではなかったということは理解できる。また戦前の日本も悪いことづくめではなかった。明治維新の改革はエリートが持ち込んだ西洋の思想に多いに依存していたが、大正デモクラシーの運動は日本のグラスルーツから立ち上がった。それは普通選挙の実施にとどまらない。女性や被差別部落民は、自分達の社会的地位の向上を求めて立ち上がった。自由と平等への希求は全国的な広がりを見せた。大正デモクラシーが成功を収めていれば、日本は外国の介入なしにプロシア式の明治憲法を民主的なものに改正できたかも知れない。遺憾ながら大正デモクラシーはドイツのワイマール民主主義と同様に、自ら崩れ去ってしまい、軍国主義の台頭を許した。我々が戦前の政治文化を批判的に見つめねばいけないのは、まさにそうした理由からである。
現在、安倍晋三氏が野田佳彦首相に代わって政権をとる公算が最も高い。「失われた20年」に鑑みれば、時代遅れで機能しないシステムは一掃されねばならない。しかし、誰が首相になろうとも、そしてかれの思想的立場がどのようなものであろうとも、国内外で不要な誤解を生じないためには、「戦後レジームの見直し」が何を意味するのかを明確にすることが必要である。日本はドイツとともに民主主義を世界に広めるうえでのロール・モデルである。日米同盟の深化、欧米とアジアの民主国家との戦略的提携の発展、そして国際舞台での自らの存在感の向上には、これが重要な点である。イラクとアフガニスタンでの日本の貢献を忘れてはならない!歴史修正主義は日本が国際舞台で成し遂げてきたことを台無しにするだけである。(おわり)
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