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2012-11-20 00:00
最近のシリアをめぐる動き
水口 章
敬愛大学国際学部教授
11月1日、シリア情勢において主要反政府各グループが打倒アサド政権に向けて新たな統合体を組むことに合意した。シリア政府の戦闘機による反政府勢力への空爆が前例のないほど増加しており、シリアからトルコに越境した難民は11月8日から9日の晩の間だけで1万1000人に上った(現在のところ、トルコにおけるシリア難民は約12万人)。その中、反体制勢力は8日からカタールのドーハで、カタールおよびトルコの外相、アラブ連盟事務局長、米国国務次官補の参加のもと拡大会合を開催した。その結果、11日に新たな反体制勢力の統一体「シリア国民連合」を結成した。同連合の議長にはイスラム法学者のムアズ・ハティブ師(ウマイヤド・モスクの元イマーム、52歳)が選出された。
シリア国民連合は今後、国際社会の対シリア武器支援や経済支援の窓口になる。シリア情勢は10月31日に米国が「シリア国民評議会」に対する支持を撤回し、シリア国内の前線で戦っているシリア人の多くを代表する機構の設置に動いた(11月3日付「ニューヨーク・タイムズ」)。また、中国も北京を訪問したアラブ連盟国連特使のブラヒミ氏との協議を通し、平和的解決に向けての4項目を提案している。この中国は、広い基盤を持った暫定統治機関の設置にはアサド政権の存在が含まれないとの考えを示した(11月2日付「アル・ハヤート」)。
今後の注目点は、ハティブ師のもとで60人からなる評議会メンバーが一体化を保てるかである。特に、アサド政権の基盤であるアラウィ派をどれだけ取り込めるか、また、これまで反体制派勢力の中核的存在であった「シリア国民評議会」のメンバーの不満を解消できるかどうかがポイントとなる。
一方、ロシアのテレビ局とのインタビューで、バッシャール・アサド大統領は、「私はシリアで死ぬ」と述べており、アサド政権を支える人々の力は今でも決して侮れない。また、11日にはゴラン高原でシリアとイスラエルの間で砲撃が交わされている(39年ぶりの戦闘)。さらに、NATO軍のラスムセン事務局長が12日にプラハで、シリア国境で戦闘が散見されるトルコに関し、NATOは同盟国としてトルコを保護、防衛するだろうと改めて述べた。シリアの平和構築の道のりはまだまだ紆余曲折があると思われる。その意味でも、11月末の日本でのシリア問題会議の開催の重要性が増している。
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