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2012-11-27 00:00
(連載)なぜオバマ大統領は再選を果たせたのか?(2)
中岡 望
国際基督教大学非常勤講師
今回の大統領選挙は予想に反して、政策や哲学を巡る論議よりも、人物が重視された点に特徴がある。オバマ大統領が展開したのはロムニー候補のイメージを貶めるようなネガテフィブ・キャンペーンであり、ロムニー候補も大量の資金を投入して同様なオバマ攻撃に終始した。オバマ大統領は、国民に自分を選ぶのか、ロムニー候補を選ぶのかを迫ったのである。ニューヨーク・タイムズ紙が行った出口調査の中に、「どちらの候補が自分の様な人々を気にしていると思うか(care about people like me)」という設問がある。これに対して、オバマ大統領がより大きな共感性を持っていると答えた有権者は82%に達しているが、ロムニー候補と答えたのはわずか17%に過ぎなかった。多くの有権者は、オバマ大統領に親近感を抱いていたといえる。
選挙戦の後半、もうひとつ選挙戦略で大きな違いがあった。前回の大統領選挙のように国民の心に訴えかけるような明確な政策アジェンダを提出できないことで、オバマ大統領は国民の支持を失うのではないかと懸念された。他方、ロムニー候補は共和党保守派の主張から離れ、穏健な姿勢を示すことで無党派層の取り込みを図った。言い換えれば、オバマ大統領は支持基盤の掘り起こしに注力したのである。すなわち2008年の大統領選挙での当選の原動力となった支持基盤を固めることに注力したのである。これに対してロムニー候補は無党派・穏健派への支持基盤の拡大を図ったのである。
では、選挙の結果を決すると言われる、無党派はどう動いたのであろうか。出口調査では、無党派層の57%がオバマ支持で、ロムニー支持は41%に留まった。ロムニー候補の中道寄りへのシフトは奏功しなかっただけでなく、足下の保守派の熱気を奪ってしまったと見られる。共和党内での予備選挙では、ロムニー候補は保守派の支持を得るために、軸足を保守派へと移していった。その結果、保守派の信任を得る形で、大統領候補に指名された。だが、保守派の支持基盤だけでは当選はおぼつかない。国民的な支持を得るためには、今度は軸足を中道へと移していった。共和党や保守派からの強烈な反発は招かなかった。おそらくロムニー候補の中道よりの姿勢を問題とするよりも、とにかくオバマ大統領に勝利するという考え方が優先されたのであろう。
だが、その代償として、保守派の盛り上がりが急速に失われてきた。2004年の大統領選挙で圧勝したブッシュ大統領は、宗教的右派、社会的保守派など共和党の枠を越える保守層の支持を獲得できた。今回の選挙では、保守層の姿が見えなかった。もともとロムニー候補は共和党のエスタブリッシュメントが推す候補であり、共和党を現場で支えるグラスルーツ組織とは疎遠な存在であった。事実、今回、ティーパーティ組織はロムニー候補を積極的に支持した形跡はないし、また保守的なエバンジェリカル(福音派)も積極的な動きを示さなかった。こうした保守層は政策よりも原則を重視するため、本来の保守思想とは遠く、また選挙戦略で中道寄りを示したロムニー候補は、自分たちの候補ではなかったのである。保守主義者は政策で動くのではなく、原則で動く傾向がある。それだけに、プラグマチックなロムニー候補の熱狂的な支持者にはなれなかった。(つづく)
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