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2012-11-29 00:00
(連載)なぜオバマ大統領は再選を果たせたのか?(4)
中岡 望
国際基督教大学非常勤講師
これに対してロムニー候補は“白人戦略”を取った。保守的な中産階級以上の層に照準を当てた運動を展開したのである。だが、その数は長期的に衰退傾向にある。たとえば、結婚しているキリスト教徒の白人の数は1950年代には有権者の80%を占めていたが、2000年には40%を下回るまでに減っている。特に若者層で、その傾向は顕著に見られ、結婚している白人キリスト教の有権者の比率は20%を下回っている。
選挙で勝利するには“ヒスパニック・ファクター”が重要になってきている。ロムニー候補は、明確なマイノリティ戦略を持っていなかったといっても過言ではないだろう。また、移民問題などで現在の共和党はヒスパニック系アメリカ人の反発を買う政策を前面に打ち出している。さらに今回の選挙で共和党は、移民が投票に際して身分証明書の提示を求める法案を幾つかの州で成立させるなど、露骨な政策を取ったこともマイノリティの反発を買ったといえる。
さらに人口動態的に、もうひとつの大きな要因がある。それは若者層の存在である。30歳以下の若者の有権者は全体の有権者の20%を占めるまでになっている。彼らはベビーブーマーの子供たちで、“ミレニアル(Millennial)世代”と呼ばれている。2008年の大統領選挙では、オバマ大統領の「希望」と「変革」のスローガンに共鳴し、大挙して選挙運動に加わった。しかし、その後の雇用情勢の悪化、特に大卒者は職がない上に奨学金返済圧力が加わり、極めて厳しい状況に置かれている。そうした若者層が“オバマ離れ”をすると見られていたが、結局、オバマ支持に留まった。“アメリカン・ドリーム”がもはや高嶺の花となり、低賃金に喘いでいるが、ロムニー候補が勝利すれば、さらに状況は厳しくなると予想される。ロムニー候補に将来を賭ける状況ではない。貧富の格差が拡大するなかで、超金持ちのロムニー候補は味方ではありえない。彼らがオバマ連合に残ったのも自然な選択といえよう。こうした傾向は、これからもさらに強まると予想される。
言い換えれば、長期的に共和党の支持基盤は確実に縮小する傾向にあるのである。すなわち白人の比率は1950年代から2000年の間に15ポイントも減っている。2008年の大統領選挙が終わり、オバマ大統領が誕生し、民主党が両院で過半数を占めたとき、「共和党の長期低落が始まった」「共和党は限界的な党になった」と言われた。だが、2010年の中間選挙で共和党が下院を制したことで、そうした議論は消えた。しかし、以上で指摘したように、共和党が現状のままであれば長期的低落は避けられないだろう。今回の選挙の意味は、政策論争でもなく、景気論争でもなく、アメリカ政治の構造的な変化を明確に示した選挙であったことだ。(おわり)
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