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2013-01-21 00:00
「上げ潮路線」の今後と2つの懸念
船田 元
元経済企画庁長官
安倍新内閣がスタートした昨年暮れから、日経平均株価が1万円台を回復し、為替相場も1ドル90円に近づくほどの円安傾向を示した。これは言うまでもなく新政権が経済の「上げ潮路線」に舵を切ることへの、市場の素直な反応に他ならない。この期待感を裏切るまいとして、新政権は矢継ぎ早に政策を発表した。まず経済立て直しの司令塔として、ミクロ経済分野では「日本経済再生本部」と、そのもとに置かれる「産業競争力会議」を始動させた。マクロ経済の分野では、民主党政権時代には動かさなかった「経済財政諮問会議」を久しぶりにスタートさせた。「ロケット・スタート」と安倍総理は表現したが、まさにその通りである。
具体的な政策としては、先週末に総額10兆3千億の「緊急経済対策」を決定し、その実行のために13兆1千億の補正予算案を決めようとしている。これとあわせて、編成が遅れている「平成25年度予算案」と「税制改正大綱案」も、今月中には決定する運びとなった。特に予算については、切れ目のない景気刺激を行うため、「15か月予算」という考え方で対応する。 安倍政権はこれまでの民主党政権が採ってきた「縮小均衡の分配政策」と決別し、「成長戦略による富の創出」をスローガンとしている。減り続けるパイをどのように分けていくかではなく、パイそのものをどうやって大きくしていくかを目標としている。
さて今後の経済運営についてだが、私は2つの懸念材料を指摘しておきたい。ひとつは政府と日銀の距離の問題だ。インフレ目標に向かって、両者が協議し、協力していくことは賛成だが、日銀の判断と行動を政府が常に押さえ込む仕組みは、常態化すべきではない。景気動向について冷静に判断し、適時適切な金融政策を行うという「中央銀行」としての役割は、きちんと確保すべき、というのが私の考えだ。
もうひとつは、財政規律の問題である。今回の補正予算案の原資として、建設国債5兆円強の増発を行わざるを得なくなった。上げ潮によって将来の税収が増えることが期待されるが、既に巨額の債務が積み上がっている。また少しでも日銀が政府の国債を買う、即ち政府のファイナンスに踏み込むことになれば、市場からの信用は崩れてしまう。今後は景気の回復に英断を振るうべきだが、合わせて以上の2点についても、決してないがしろにしない、細心の注意が必要である。
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