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2013-01-28 00:00
北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応急げ
鍋嶋 敬三
評論家
北朝鮮の核・ミサイルの脅威が差し迫ってきた。2012年12月12日の北朝鮮の長距離ミサイル発射に対する国連安全保障理事会の制裁強化決議(2013年1月23日)に対して、北朝鮮は連日のように強硬姿勢を打ち出した。しかもその反応は、予め準備していたように段階を踏んで、声明の権威を高めている。安保理決議と同時に外務省声明で対抗措置として3度目の核実験を示唆、非核化を目指す6カ国協議を拒否、翌日には国家の最高機関の国防委員会が「衛星と長距離ロケット、核実験が米国を狙う」と明言した。27日には金正恩第一書記が「強度の高い国家的な重大措置をとる断固たる決意を表明した」ことを公表、核実験実施の意思を明確にした。体制生き残りをかけた北朝鮮の最優先課題は、米国を直接交渉の場に引き込むことである。そのための切り札として、北朝鮮は時機を選んで実際の行動に移すことが予想される。
父親の故金正日総書記から権力を世襲した正恩第一書記は「瀬戸際政策」も確実に継承した。長距離ミサイル発射に続く核実験は、朝鮮半島をめぐる安全保障問題がアジアから全世界に広がる新たな局面に突入することを意味する。防衛省は1月25日、政府の安全保障会議に北朝鮮のミサイル発射についての報告書を提出した。(1)射程は10,000キロ以上に及び米国本土西部に到達可能、(2)一定の搭載能力を持ち、打ち上げ精度を高めたことが、日本を射程距離に入れる短・中距離ミサイルの性能向上につながる、と指摘し、第三国への技術移転などから国際社会にとっても重大な懸念があることを示した。北朝鮮は日本のほぼ全域を射程に入れるノドン・ミサイル(射程1,300キロ)、さらにグアムやアラスカを攻撃可能な中距離ミサイル・ムスダン(射程2,500ー4,000キロ)を配備している。
今回の長距離ミサイルの成功によって命中精度が高まり、3回目の核実験で核弾頭の小型化の技術が進展すれば、核攻撃の能力は飛躍的に高まる。米国にとっても重大な懸念材料だ。パネッタ国防長官、カーニー大統領報道官が間髪を入れず「北朝鮮のどんな挑発行動にも対処する用意がある」「追加的制裁措置をとる」とけん制したのも北朝鮮の行動が切迫していると踏んだからだろう。射程10,000キロは、米本土西海岸のロサンゼルス、サンフランシスコの大都市、さらに米核戦略の心臓部に当たる北米航空宇宙防衛司令部のあるコロラド州にまで達するから、米国の危機感が一気に高まった。防衛省によれば北朝鮮のミサイルは日本の領域(沖縄海域)に10ー12分で到達した。
日本は北朝鮮の核・ミサイル、中国の海洋進出を含め激変するアジア・太平洋地域の安全保障環境に対応する防衛・安保戦略を早急に確立する必要に迫られている。政府は1月25日の閣議で民主党政権当時に策定された防衛計画大綱の見直しを決定、年内をめどに結論を出す方針である。日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定のための日米協議も始まった。米国の財政的制約の中、米国の拡大抑止を確実にするためにも、自衛隊の役割拡大を明確に打ち出す時期に来ている。日米同盟強化のために集団的自衛権の行使の容認に向けて検討を急ぐべきである。安保、防衛問題でブレーキをかけ続ける公明党との連立政権で、国の存立に関わる喫緊の課題に正面から取り組む指導者として安倍晋三首相の政治的力量が試される。
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