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2013-02-04 00:00
(連載)アルジェリア人質事件とイスラム過激派のテロ(1)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
最近の中東地域では、アルジェリアでの人質事件以外にも、イスラエル国会選挙、シリア滞在ロシア人のシリアからの退去、23日にはヨルダン下院議会選挙、イラクでのシーア派を対象の自爆テロなど国際社会が注目するニュースが多く流れた。国際社会は、イスラエル国会選挙(120議席)で、イラン核開発阻止を最優先課題とすると唱えるネタニヤフ首相が率いるリクードと右派のわが家イスラエルの統一会派「リクード・わが家」の議席動向に注目していた。選挙結果は、同会派が11議席減らして31議席となり、新党「イェシェ・アティド」(未来がある)が19議席獲得した。この新党は、イラン核問題で対話重視を主張している。この点だけに注目すれば、ネタニヤフ政権の武力行使も辞さないという対イラン政策はイスラエル市民には十分受け入れられているとは言えないだろう。
武力行使により人命が失われることは、いずれの国においても受け入れることは難しい。アルジェリア人質事件では日本人を含む少なくとも37人の犠牲者が、イラクでの自爆テロ事件では死者42人がでており、シリアでの武力衝突では1日に100人もの人命が失われ続けている。そして23日にはナイジェリアでの暴力事件で23人の市民が亡くなった(おそらくイスラム過激派ボコ・ハラムによる)。そのアルジェリア人質事件は、現地も少しずつ平静さをとりもどしつつあるようで、同国政府の発表以外の情報資料も報道機関に流れ始めており、全容がおぼろげながら見えるようになってきた。しかし、やはり犯行動機はまだ明確になっていない。そこで、少し情報資料を整理してみる。
犯行計画は、2か月以上前に立てられた(1月21日のセラル・アルジェリア首相の発言、ただし、犯人の一人の自供では2か月半前)。犯行グループのメンバーは8か国に及ぶ32人以上(21日のセラル首相の発言。32名のうち29名死亡、3名逮捕。また犯行声明では40名とされている)。首謀者はモフタル・ベルモフタール(アルジェリア人、1972年生れ)。実行犯グループは、カナダ人がコーディネーター、リーダーはアブドゥルラフマーン・アン・ニジェリー(別名アブ・ドゥジャーナ)。犯行グループは2012年12月にベルモフタールが新たに結成(メンバーはベルモフタールに血判で死の忠誠を表明)。犯行グループの要求は、犯行声明および報道によると(1)フランスのマリでの軍事行動の停止、(2)その後の声明で、米国で収監されているアブドゥルラフマン師とサディーキの釈放を要求、(3)また、アルジェリアが収監している100名のマリ人の釈放も要求している。(4)そして、犯行途中にアルジェリア政府に、人質とともに国外(リビア説、マリ説がある)への脱出を要求している。
今回の犯行が、アルカイダ指導者のザワヒリのメッセージを踏まえ、アルカイダからの承認を得て実行されたものか、ローカルな事情から行われたものなのかは現時点では不明である。おそらく確かなことは、ベルモフタールを北部マリの司令官から解任したイスラム・マグレブのアルカイダ(AQIM)との関係性は薄いということだ。イスラム過激派グループが要人を誘拐しアルジェリア政府と交渉した事件は、2012年4月にも起きている。その時は、マリのガオ(マリの反政府勢力アザワド解放民族運動が独立宣言をした都市)で、ベルモフタールとも関係のあるイスラム統一聖戦運動(MUJAO)がアルジェリアの外交官7人を誘拐し、アルジェリアが収監しているマリ人イスラム教徒の釈放と1500万ユーロの身代金を要求した(1月22日付シャルクル・アウサト紙電子版)。同事件では、アルジェリア政府が要求を拒絶したため、人質全員が殺害された。(つづく)
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