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2013-02-05 00:00
(連載)アルジェリア人質事件とイスラム過激派のテロ(2)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
ベルモフタールが、結成したばかりで(密輸や誘拐の身代金などで得た)資金がない組織を抱え、身代金だけでなく、名声をイスラム過激派内で高めようとしたとも考えられる。そのためには、天然ガスプラントの爆破、マリ人収監者の釈放などとともに、企業の要人を誘拐しアルジェリア政府ではない民間企業と交渉を(アルジェリア国外で)行うことを企図したとしても不思議ではない。そうだとすれば、犯人グループが人質を取って国外脱出をアルジェリア政府に要求したことや、早期に5台の車で逃走を図ろうとした事実も理解できる。
以上のような推論の先に見えてくるものは、北・西アフリカのイスラム過激派勢力の今後の動向である。そのポイントとなるのは次の3点のようなことだろう。(1)AQIMを内部対立から離脱したベルモフタールは、武装組織を結成できる人的ネットワークを持っている。そして今回、ジハード戦士の指導者として名声を得た。ただし、現在のところ実行部隊、武器、資金はあまり多く保持していないと考えられる。(2)リビアとアルジェリアの南部、マリ北部のトアレグ部族が居住する地域では、「アンサール・ディーン」、「西アフリカ統一聖戦運動」以外にも「アンサール・シューラ」「アンサール・シャリーア」などのイスラム武装組織の活動が見られる。これらがベルモフタールとの連携を強める蓋然性が高まっている。(3)アルジェリア政府が国内のイスラム過激派組織に対する治安強化をはかることへの反動が起きる可能性がある。
これらを踏まえれば、北・西アフリカでイスラム過激派の活動が活発化することが予想される。国際社会におけるイスラム過激派の動向は、アフガニスタンでは米国とタリバンの間で対話が進んでおり、またイエメンでは同国と米軍の共同作戦によってアルカイダの重要指導者の1人サイード・アル・シャフリーが死亡したとの報道がある(1月22日付アル・アラビーヤ電子版。ただし死亡が確認できないとする報道もある)。
確かに、米国の無人偵察機の活用、国際的な資金ルートの締め付けなどにより国際テロの件数自体は減少傾向にある。しかし、北・西アフリカにおいては「アルジェリアの危機の10年」(1992年より)、そして2011年のリビアのカダフィ政権の崩壊により、サヘル(サハラ砂漠南縁部)を震源地としてイスラム過激派の活動は活発化している。国際社会はテロとの戦いにおいて、パキスタンと、マリを中心に広がるサヘル地域の不安定性を拡散させないよう、国際協調体制をとる必要性を再認識させられた。日本もその体制づくりで役割を果たすことが求められることは確かだろう。(おわり)
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