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2013-02-18 00:00
安倍のTPP参加表明は不可避だ:日米首脳会談
杉浦 正章
政治評論家
2月22日の日米首脳会談に向けて自民党の環太平洋経済連携協定(TPP)慎重派が気勢をあげているが、その実態はといえば、進退が極まりつつある。なぜなら自民党は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」との方針を公約として主張してきたが、交渉の現実は「聖域のある関税撤廃」の流れとなっているからだ。したがって、交渉参加そのものに反対をしつづけても、根拠が薄れている。今世界中に自由貿易協定(FTA)や、より幅広い経済連携協定(EPA)締結への潮流が沸きたっており、関税撤廃は歴史的な必然性を帯びてきている。その中で通商国家日本の“孤立”はあり得ない。農協を中心とする反対勢力は、もはや条件闘争しか道は残されていないことを自覚すべきであろう。首相・安倍晋三の基本的な姿勢は、オバマが“聖域”を認めるかどうかを見極めたいという点にある。政府筋によると「その真意を探るための裏での接触が現在日米間で進行中である」という。その内容は、極秘中の極秘であろうから、知る由もない。しかし米国の実際の行動から見れば、「聖域なき」は既に破綻しているのである。オーストラリアとのFTAで、米国は砂糖などの輸入関税を残すことで合意している。また北米自由貿易協定(NAFTA)ではカナダの乳製品が関税撤廃品目から除外されている。このように米国は、1部品目の除外を認めざるを得なくなる交渉を既に展開しているのである。日本のコメなども例外になり得るのだ。
にもかかわらず、自民党内には衆参両院の200人もの議員らが「交渉断固反対」を唱えている。すべては衆院選挙に当たって農業団体に“固い約束”を強いられた結果である。しかし考えても見るがよい。日本の農業従事者の平均年齢は66歳に達している。 10年後には76歳になるという現実をどう見極めるのか。政府は、戦後の産業構造が大きく変化する中で農業を守りに守り抜いてきたが、逆に守れば守るほど衰退するというのが現状だ。ウルグアイ・ラウンドでコメ農家を守るために6兆円もの血税をばらまいたが、その結果は惨憺たるものであったではないか。みんなの党の幹事長・江田憲司が「コメに778%の関税をかけても、ウルグアイ・ラウンドで血税をばらまいても、岩手県分の農地が失われて、埼玉県分の耕作放棄地が出てきた」と述べる現実を直視しなければならない時に至ったのだ。戦後我が国の政治を大きく動かしてきた農協の命運も、高齢化で限界に向かいつつあるというのが実態だ。
国会議員は目先の選挙だけに目を向けず、世界的な潮流を見極めるべきである。米国と欧州連合(EU)はFTAに向けての交渉を6月から開始する。場合によっては、世界の貿易ルール作りで米欧が主導権を握る可能性すら出てきている。これにより関税撤廃の動きは、地球規模で進展していく流れとなっている。日本だけがこの潮流に棹さして生きていけるのか、ということである。言うまでもなく日本は人材と技術を生かす工業・貿易立国で生きていくしかない。「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える」とは、その昔米国の上院議員が口にした言葉だが、その選挙すら農村票に依存しているだけでは、成り立っていかないのである。農家の高齢者だけをあてにして、その子弟の都市型産業従事者の票を無視する選挙が成り立たないのは、目に見えて来ている。自民党が都市部において総選挙に圧勝したのは“ノーキョー票”によるものではない。
誰の目にも明らかであるのは、現状のままでは農業は従事者の超高齢化により衰退する方が、関税撤廃で衰退するより確実で、しかも早くなるということだ。ここは企業の農業参入への道を広げ、コメなどを輸出産業へと育成することである。構造を抜本から改革することなしに、再びつかみ金をばら撒いて農家を説得するという構図をTPP慎重派が描いているとすれば、これは国家の将来に大きな禍根を残すだけであろう。したがって交渉への参加すら否定する自民党議員らの主張は、既に成り立たなくなっているのである。安倍は、日米首脳会談を絶好の機会として捉え、少なくとも「交渉への参加」は表明すべきである。参加をして20を超える交渉分野一つ一つで利害得失を見極め、日本の主張を堂々と展開していくべきである。重要な着目点は、参加国第2位の経済大国である日本抜きでは“環太平洋の経済連携”とはなり得ないことである。当然世界経済への責任もあるが、譲れないものはどこの国もゆずれない。参加すら否定していては、その主張は誰にも届かないし、情報も入ってこない。
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