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2013-03-11 00:00
習近平は「核完成」反対だが、北の体制は維持
杉浦 正章
政治評論家
北朝鮮制裁強化の包囲網が国連安保理決議によって採択されたが、問題は中国の“本音”がどこにあるかだ。政府筋は「決議に習近平の意思が反映されていることは確かだ」と漏らしている。しかし、それが中国の北擁護の政策転換を意味するかというと、「あり得ない」と否定している。なぜなら中国が北を見放せば、北の金正恩政権は崩壊するし、北の崩壊は中国共産党一党独裁体制の崩壊に直結しかねないからだ。北の完全核武装は阻止するが、金政権継続は支持する。これが習近平の基本戦略のようだ。安保理決議の要点は、法的拘束力を持つ国連憲章第7章が挿入され、「禁輸品の疑いがある場合の貨物検査」と「核兵器などの開発につながる金融取引の凍結」が、加盟国に義務づけられた。これまで2006年と09年ののミサイル発射、延坪島砲撃、過去2回の核実験と、ことごとく安保理決議に盾を突いてきた中国は、明らかに対応を転換させた。しかし、第7章の適用については最後まで反対して、日米韓3国の多数派工作包囲網の中で孤立の様相を帯びるに至った。折から中国世論も、ネットでは北の核実験を批判する書き込みが目立ち始めた。3月14日に国家主席に就任する習近平としては、国際的印象も考慮する必要がある。こうした事情で、第7章の賛成に回ったのだ。
なぜ北の核ミサイル完成反対に踏み切ったかと言えば、中国にとっても北の核の脅威が現実のものとならざるをえないからだ。核爆弾の小型化と長・中距離ミサイルへの登載が実現すれば、まかり間違えば北京を狙う政権が誕生しかねないことでもある。ロシアはとっくに北に安保上の脅威を感じ取っており、中国も同盟国だからといって放置できない段階まで到達したのだ。したがって習近平はとりあえず国連決議に同調して、核武装の完成を阻止する動きに出たのだ。こんご決議にそって核武装を完成に向かわせないための対応を取り続けるであろう。しかしながら、中国新指導部が、核とミサイル以外で北を締め付けるかというと、ことは逆であろう。政府筋によると「米国との同盟関係にある韓国と国境を接するようになることは、絶対に避けたいのが基本戦略であり、変えることはない」と漏らす。
中国は、国内各地で生ずる“格差暴動”から、とりあえずは国民の目を尖閣問題に向けることで押さえてきたが、暴動に加えて、北の崩壊が生じたらどうなるかだ。1991年のソ連衛星国家群の崩壊が、ソ連邦の崩壊に直結したように、北の崩壊がもたらすものは共産党一党独裁にとって致命的だ。なぜなら北が崩壊すれば、中国が軍事介入して暫定政府でも樹立させない限り、間違いなく韓国に併合される流れとなろう。国境は韓国と接することになる。日米、米韓軍事同盟による極東の対中包囲網が完成することにもなる。加えて、国境の鴨緑江を渡って難民が流入し、そのあつれきを受けて中国の国内情勢は大波乱の状態に突入する。とても共産党政権は維持できなくなる要素が国内外に満ちるのだ。従って、習近平の基本路線は、核武装は阻止するが、北の政権は維持せざるを得ないのだ。ある意味で、北と中国共産党は密接不可分のもたれ合いなのだ。北にとっての中国は、世界的な孤立の中で最後の頼みの綱。中国にとっての北は、共産党独裁にとって最大の防波堤なのである。
国連決議の欠点は、その主要な狙いが核兵器完成阻止にあることであり、金正恩体制の崩壊を狙った経済制裁の意味合いが少ない事であろう。金融制裁も、マカオのケースのように大きな打撃を与える流れにはなりにくい。なぜなら、マカオで懲りた北は、資金の分散を図っているからだ。専門家筋は、いま米国の軍事偵察衛星も、日本の偵察衛星も、鴨緑江にかかる遼寧省丹東の鉄橋近辺にカメラの焦点を合わせているという。物資の流れを監視しているのである。これまでのところ「貨物検査」らしき事が行われているらしく、3月5日の決議以来トラックの流れが幾分滞っているように見えるという。しかし、完全に物流がストップしている状況にはない。北の経済に影響が出るほどの問題にはならないのだ。明らかに中国は、食料や、石油などの基幹物資の流通に歯止めをかけてはいない。中国は最新ミサイル兵器「KN−08」用の移動用車両を北に向けて輸出したほどの国だ。これまでどおり一定期間を経れば“尻抜け”になる可能性は多分にあるとみなければなるまい。
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