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2013-03-26 00:00
広島高裁判決は最高裁では維持されない
杉浦 正章
政治評論家
いやはや訴訟を起こした弁護士も、「勝訴」の垂れ幕を用意しておらず、「無効のときのコメントは用意していなかった」と述べるほどの予想外の判決であった。「違憲かつ無効」とは、まるで昨年の総選挙がクーデターであったと言わんばかりである。この判決を下した広島高裁裁判長・筏津(いかだつ)順子の顔が見たくなって、ネットを検索したが、ヒステリーとも思えない顔をしていた。ごついが、温和そうなフツーのおばさんであった。しかし戦後初の無効判決は、明らかに突出している。したがって最高裁判決では維持されないだろう。判決は1高裁の「警告」でしかない。それも恣意的な目立ちたがり判決の性格を持つ。政府・与党は、0増5減法案を早く成立させるだけだ。
政治的に見れば、広島1区と2区の該当議員は明らかにとばっちりを受けた。両区とも1票の格差は最高裁の判決で違憲とされた2.3倍より遙かに低く、外相・岸田文男の1区で1.54倍、2区は1.92倍だ。合憲の範囲内で選挙をやって「無効」にされたのではたまるまい。最高裁がこれまで76年と85年の違憲判決で「無効」と断じなかったのは、違憲性は区割り自体にあり、当該選挙区の議員だけが割を食うのは避けたいという判断があったからだ。2区の平口洋が「無効というのは、ちょっと踏み込みすぎではないか」と不満を述べるのももっともだ。それどころか自民党内には「 到底受け入れられない不当判決」「国会の独立性を揺るがしかねない行為だ」という批判が生じている。このあたりが本音だ。
最高裁がこれまで「無効」と判断しなかったのは、裁判官の間で「司法は国権の最高機関たる国会に対して抑制的に対処すべき」と言う思想が定着していたからに他ならない。当時は中選挙区制だったが、格差は4倍から5倍もあり、計算方法によっては6倍に達した例もあった。にもかかわらず抑制的であったのだ。今回の場合、たかがとは言わないが、2.3倍であり、それも昨年末の与野党合意で0増5減法案が成立、これに基づき、3月28日には衆院議員選挙区画定審議会から区割り見直し案が勧告される予定だ。これに基づいて政府・与党は法案を早期に提出、成立を図る段取りになっている。高裁判決に対して最高裁がどう出るかだが、「突出判決」を維持する流れではない。最高裁が無効判決を出す場合は、1選挙区の違憲性の判断ではなく、区割り全体の違憲性を判断するから、訴訟全選挙区を無効にするというのが一般的な見方だ。そうなれば、安倍は解散に踏み切らざるを得ないことになり、せっかく安定軌道に乗ろうとしている国政が大渋滞する。さすがに地方の裁判官の近視眼的な判断ではなく、最高裁判事ともなれば“偉い”のだ。正確に言うと、総合判断力があるのだ。だから「広島踏み込みすぎ判決」はまず99%維持されない。
しかし、だからと言って、政府・与党はもたもたしていてよいときではない。“偉い”最高裁判事の心証を良くするためには、とりあえず0増5減を早く成立させることが肝要だ。面白いのは、小沢一郎が「一連の違憲判決を見て、首相・安倍晋三が好機ととらえて、夏に衆参ダブル選挙があり得る」という情報を流していたかと思ったら、また党首で発言する者が出てきたことだ。みんなの代表・渡辺喜美が「衆参ダブル選挙も考えなくてはいけない」と述べているという。自民党支持率40%。内閣支持率70%。いまダブルをやれば自民党単独で300議席突破。相乗効果で参院のねじれも一挙に解消する。まさに絶好の機会ではあるが、政治は奇道を選んではならない。大道を選ぶべきだ。渡辺の軽さは広島高裁の判決に勝るとも劣らない。まさに鴻毛のごとしだ。
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