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2013-03-29 00:00
石原の入院長期化で維新に“きしみ”増大
杉浦 正章
政治評論家
まだどうなるかは断定できないが、石原慎太郎が共同代表としての機能を果たせなくなるということは、日本維新の会の国会におけるたがが外れるということだ。たがが外れれば共同代表・橋下徹の大阪系と国会議員団代表・平沼赳夫中心の旧太陽系の亀裂が強まり、逆に民主党元代表の前原誠司らとの合流の流れも出てきやすくなる。永田町では「政界は維新を軸に再編含みで推移しかねない」との見方が広がっている。その場合、前原の動きが一番注目される。石原の長期入院がもたらす影響は大きい。慎太郎の入院の経過を見ると、政界大物の最後の入院劇と同じパターンを辿っている。たいていが「風邪」で入院だ。池田勇人の場合は「前がん症状」だったが、咽喉がん。大平正芳の場合は「不整脈」だったが心筋梗塞といった具合だ。発表などはまるで当てにならない。石原の場合怪しいのは、2月22日に入院して、分かったのは3月2日だ。風邪なら隠すことはないのに、ひた隠しにしていた証拠だ。その後3月4日に橋下が電話して、通常に会話している。同19日に平沼が「近々復帰される」と、22日の本会議に出席する方針を明らかにしたが、実現せず。最近は「今週いっぱい入院。30日の党大会に出席」が、「党大会出席延期」だ。この大阪での党大会に出席出来ないことは、今後の石原の病状を占うキーポイントであるかもしれない。
このように揺れに揺れているのはなぜか。まず確かなのは、冗談だが「まだ生きている」ことだろう。いくら「石原天皇」でも、いまどき秦の始皇帝のように、1か月も死亡を隠せるはずはない。しかし、永田町には脳梗塞説や膵臓がん説といった際どい情報が流れている。元首相・菅直人が小ずるいことに「脳梗塞だってぇ」と、尋ねるようにして情報を流布したという説もある。だが、病気の詮索などはどうでもよい。まず政治家は動けるかどうかで判断することが先だ。それではどのような状況下で「生きている」かだが、強気と弱気のまだら状態ではないか。「よし、出かけるぞ」と言ったかと思うと、「やっぱりやめた」の繰り返しだ。これが情報を錯綜させているのだ。2月12日の衆院予算委の代表質問を最後に、「精神的に燃え尽きた」可能性がある。80歳の石原は、かねてから「命ある限り暴走老人でいく」と述べ、しきりに寿命が長くないことを自ら示唆するとも受け取れる発言を繰り返している。
維新の前宮崎県知事・東国原英夫に至っては、「石原さんが最初に銛(もり)先になって行く、死んでも行くとおっしゃったから、たぶんあと数年の命だと思う。」と、いくら石原が嫌いでも“失礼”すぎる発言をしているが、何か情報があったのかも知れない。『週刊新潮』が3月28日に報じた中で一番信用出来る部分は、親友で首都大学学長・高橋宏の発言だ。高橋は3月10日に電話して、石原と話をした。石原は「気の合う何人かで酒飲んで、学生時代の歌でも歌いたい」と述べていたという。極めて弱気になっていることが浮き彫りとなる。高橋は「あいつは落ち込んでいて『都知事を辞めたのは間違いだった』と述べていた」「いまは男の美学というか、引き際のタイミングを計っているのではないか」とまで述べている。要するに、石原は親友には初めて本音で“泣き”を見せたのだ。こうした報道が明らかになった28日、永田町では維新分裂説や政界再編説が一挙に流布し始めた。もともと維新には大阪系と旧太陽系の構造的な対立がある。橋下が内弁慶で大阪にとどまっているから、締まりが利かないのだ。総選挙後も維新の要職は旧太陽系がほぼ独占した。最近では日銀総裁人事で橋下が反対を唱えて、国会議員団と衝突。もっと深刻なのは選挙制度をめぐって、橋下が小選挙区制を主張しているにもかかわらず、太陽系の園田博が中選挙区案を決定して、抜き差しならぬ対立の側面を見せ始めている。
橋下にしてみれば、「西は橋下、東は石原」で選挙をやってみたものの、石原効果は全く生ぜず、大きな誤算を経験した。しかし国会議員団を束ねるには、石原の“重し”が不可欠であった。その石原が“男の美学”で引き際を模索しているようでは、たがを一から締め直さなければならない。永田町ではいまドラスティックな再編構想がささやかれている。橋下が太陽系を切って、民主党の前原系を取り込もうとしているというのだ。前原が手勢を連れて維新と合流するというのだ。これに前首相・野田佳彦も乗るかも知れないという説までがまことしやかに語られている。前原は否定しているが、棺桶に片足を突っ込んでいる民主党にいては展望は開けない。橋下が呼びかける以上、踏み切った方がいいことは間違いない。いま維新は衆参で57人、このうち太陽系は17人。太陽系は老人ばかりで、イメージが暗く、維新の革新気風とは全く相容れないが、前原が合流すれば、イメージが一新される可能性がある。このような情報が流れる背景には、石原が政治的には“死に体”とみなされ始めた証拠である。落ち目になると風雲児石原が懐かしくなるが、毎度繰り返すとおり、尖閣の火付け役で晩節を汚した。
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