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2013-03-29 00:00
(連載)イラク戦争10周年とそれがアメリカ外交に及ぼした影響(1)
河村 洋
外交評論家
今年はイラク戦争10周年である。この機会に、イラク戦争の動機および中東と全世界の安全保障への影響に評価を下し、将来への政策上の教訓についても考えてみたい。戦争の動機と影響は緊密に関連している。まず政策形成の内幕を知る者たちからの論評に言及したい。サダム・フセインに対する開戦に当たって重要な論点となったのは核拡散、およびそのテロリストとの関係がもたらす脅威であった。当時のジョージ・W・ブッシュ大統領による「悪の枢軸」演説のスピーチ・ライターであったデービッド・フラム氏は、反西側の国家アクターと非国家アクターの根深いコネクションについて「シーア派のイランとスンニ派のハマス、イスラム神権政治のイランと共産主義の北朝鮮の関係について、懐疑的な向きもあった。しかしそれらが事実であったことはすでに判明している。さらにカーン・ネットワークはアル・カイダに核兵器の技術を売り渡し、北朝鮮は2007年にシリアの核施設建設を支援した」と語っている。
米英主導の多国籍軍に敗北した時期のサダム・フセインは核兵器を保有していなかったかも知れない。しかし、IAEAは1990年に、カーン・ネットワークがイラクに対して3年以内に核開発ができるように大がかりな支援を行なったことを明らかにした。イラクを含めた「悪の枢軸」は現実のものだったのである。イランとハマスの宗派の違いなど意味がない。ニューヨークの「ユナイティッド・ウィズ・イスラエル」という親イスラエルの市民団体は、アフマディネジャド政権下のイランをヒトラー統治下のドイツになぞらえるプロモーション・ビデオを発信している。アドルフ・ヒトラーは「ヨーロッパからユダヤ人を根絶する」と宣言した通りに、ホロコーストを実行した。マフムード・アフマディネジャド大統領も「イスラエルを地図から抹殺する」と宣言し、イランは彼の下で全世界からの圧力と批判をものともせずに核開発に突き進んでいる。イランもハマスも宗派の違いを超えた共通の敵を抱えている。また、フォルド事件によってイランと北朝鮮が核開発で緊密な関係にあることが明らかになっている。
核の脅威とともに、中東の民主化と地政学も重要である。ジョン・ボルトン元米国連大使は2月26日付の『ガーディアン』紙でイラク戦争の概観を述べるとともに、「イラクと地域の安定のためにも、サダム・フセインは湾岸戦争後に政権から追い落とされるべきだった。よって、イラク戦争は必要な戦争だった」と主張している。さらに「サダムを政権から引きずり降ろした後に、イランとシリアのレジーム・チェンジに精力をふり向けておけば、今になって両国に手を焼くこともなかっただろう」と結論している。きわめて重要なことに「ブッシュ政権は断じてイラクの核兵器について情報操作を行なっていない」とボルトン氏は強調する。「イラクは核兵器を隠していたというのが、当時の観測筋の間での共通の理解であり、たとえその時に大量破壊兵器が存在しなかったとしても、イラクはいずれ開発計画を再開して、地域と国際社会の安全保障の脅威となったであろう」と述べる。いまだにイラク戦争開戦について陰謀論を信ずる向きもあるが、ボルトン氏のような整然とした分析の前では、そんな陰謀論は意味をなさない。(つづく)
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