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2013-04-08 00:00
6カ国協議の枠組み活用を
鍋嶋 敬三
評論家
北朝鮮の第3回核実験に対する国連制裁強化決議を巡る北朝鮮の過剰反応は一触即発の危険性をはらみ、朝鮮半島が「火薬庫」であることを改めて示した。朝鮮休戦協定の「白紙化」や黒鉛減速炉の再稼働を宣言、対米直接交渉に持ち込もうという北朝鮮の目論見は効を奏していない。金正恩第1書記の就任1周年(4月11日)、建国の祖・金日成主席の誕生日(同15日)など節目の記念日を控え、朝鮮半島危機はヤマ場に差し掛かった。非核化を目指す6カ国協議は「存在しない」という北朝鮮の強硬姿勢で機能していないが、直接の利害当事国が関わる北東アジアの平和のための組織としての重要性は失われていない。こういう時こそ6カ国協議の復活に向けて国際的な努力を惜しむべきではない。
休戦協定の白紙化を前に北朝鮮は4月5日平壌駐在の外国公館に「安全が保証できない」として退避の検討を勧告した。現地の外交団はまともに受け取っていないが、ロシア外務省は勧告について中国、米国、日本、韓国と協議中であると認めた。「6カ国」の枠組みを活用した外交活動である。北朝鮮の最大の後ろ盾である中国の王毅外相が4月6日、潘基文国連事務総長と電話会談、北朝鮮の「挑発的言動に反対」する一方、外交的解決のため6カ国協議再開を呼び掛けた。国連制裁決議の厳格な実施で実効性を高める一方で、当事国が会する6カ国協議が外交的な圧力になる。北朝鮮に対して5カ国が足並みをそろえることが重要であり、そのためにも日本、米国と韓国が緊密な連携を取ることが欠かせない。
米国は金第1書記が「好戦的」(デンプシー統合参謀本部議長)で、方針決定が「予測不可能」(国務省報道官)であることに手を焼いている。弾道ミサイルと核兵器の二つの能力を手にした北朝鮮の言辞が「向こう見ず」で「大変若い指導者に誰が影響力を与えているのか分からない」(同議長)ことが最大の懸念材料だ。「核の先制攻撃」などエスカレートする一方の北朝鮮の威嚇に対して、米国は米韓合同軍事演習に戦略兵器の核爆弾搭載可能なB52やB2爆撃機、ステルス性を備えたF22戦闘機を投入し、ミサイル防衛のためイージス艦の展開や高高度防空(THAAD)システムのグアム配備などを決めた。しかし、ヘーゲル国防長官は5日、戦略核兵器のミニットマン3型ICBMの実験を5月まで延期した。北朝鮮の過剰反応で危機が一層激化するのを懸念したとされる。
朝鮮半島の第1次核危機から20年。今回の危機を押さえ込むのは外交によるほかはない。鍵を握るのは米国と中国であり、今後の米中関係を占う契機にもなる。米軍の態勢強化は北朝鮮への圧力と同時に東シナ海、南シナ海で日本、フィリピン、ベトナムなど周辺国と領海摩擦を起こしている中国に対する意思表示でもある。米国は「北朝鮮が行動を改めるため中国が影響力を行使するよう」(5日カーニー大統領報道官)働き掛けてきた。オバマ政権はケリー国務長官を4月14日から、デンプシー議長を同下旬、そしてドニロン大統領補佐官(国家安全保障担当)を5月に訪中させ、習金平政権の首脳部と直接対話する。これが半島危機が収束に向かうかどうかの分岐点になるだろう。
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