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2013-05-20 00:00
中国の透明性欠如が緊張の根源
鍋嶋 敬三
評論家
中国が軍事費の二桁成長を続け、海洋へ宇宙へと軍拡を進める。自国の支配領域を一方的に拡大しようとして、相手国の言い分を一切認めない。その「正当性」の主張と「力」による脅しによって、東アジア全域に紛争が拡大し、緊張が高まった。中国共産党政権の透明性の欠如が緊張の根源である。正当性を誇示するため黒を白と言いくるめ相手に責任を転嫁する強弁が、緊張を和らげるための信頼関係の構築を妨げている。地域紛争を鎮める重い責任のある国連安全保障理事会常任理事国としての資格が中国にあるのか、はなはだ疑わしい。中国は3月に軍近代化のため国防費10.7%増を発表した。英国の国際戦略研究所(IISS)は3月発表の「ミリタリーバランス2013」で、中国の軍事支出が過去10年間のような二桁成長が続けば、2025年には米国の国防予算に匹敵し、隠れている軍事費を加えれば10年後の2023年にはそれが実現する、との予測をグラフを使って示した。
米国の国防総省が5月6日に議会に提出した年次報告「中国の軍事力2013」では、国防費は1140億ドル。2012年の公表分は1060億ドルだが、実際には1350~2150億ドルと大きな差がある。へルビー国防次官補は「実際の国防支出は透明性を欠いているため推測が困難」と認めた。中国軍近代化の対象が陸海空軍にとどまらず、宇宙、サイバー空間に発展するにつれ、日本や米国の懸念は強まる一方だ。国防総省によると、中国は2012年に宇宙へ18基のロケットを打ち上げ、情報、監視、偵察などの衛星群を拡大した。中国は2007年、気象衛星の破壊実験を宇宙空間で行った。今年5月13日には、中国は観測実験のためとするロケットを打ち上げたが、米国は衛星攻撃兵器(ASAT)開発のための実験との見方を示していると伝えられる。
中国が戦略の柱とする接近拒否/領域拒否(A2AD)は、単に米空母に対するものではない。宇宙空間、サイバー空間が新たな主戦場である。国防総省はA2ADを「第三国、特に米国による干渉を抑止、ないしは反撃するための方策」と定義、その基本的要素として戦争のあらゆる次元における「情報封鎖」を挙げた。年次報告によると、中国は特に宇宙空間を使って敵の接近を拒否する能力を「情報化戦争」の中枢ととらえており、早期警戒、偵察衛星など敵の目と耳を塞ぐための対衛星破壊攻撃の必要性が人民解放軍の文書に示されているという。
サイバー戦について年次報告は、2012年に国防総省も含め米政府機関や世界のコンピューターに「直接、中国政府と軍の組織による侵入があった」と公表した。不透明さの批判に対して中国は「(中国の軍事政策に)米側があれこれ言う権利はない」と反論したが、国際的な懸念への答えになっておらず、透明性を欠くことに変わりはない。Wall Street Journal 紙は4月、「北京の偏執病的世界観」との見出しで、アジアの安全保障に詳しいアメリカン・エンタプライズ研究所のオースリン氏の論文を掲載した。同氏は護衛艦に対する中国海軍による射撃管制レーダー照射、日本の防空識別圏への戦闘機の侵入、南シナ海でのベトナム、フィリピンとの対決などを取り上げ、中国の国防白書は強硬姿勢を改める兆候を示していない、と手厳しく批判している。
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