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2013-05-27 00:00
ゴルバチョフ初期に重なって見える習近平政権
河東 哲夫
元外交官
中国から帰ってきたある新聞記者が「微博という中国のツイッターは書き込みが多すぎて、当局もまずいものを消去しきれない。それもあって、最近の当局は微博への書き込みを一生懸命分析しては、それに『レスポンス』することに追われている印象がある。それは、習近平政権になってますます顕著である」と語っていた。
自分はそこまで細かく中国の動向をフォローしていないのだが、この発言はかなり本当ではないかと思う。ソ連なら、1985年に始まったグラースノスチの政策のあたり、つまり原油価格の急落でソ連財政が傾き始め、ゴルバチョフが社会主義経済強化のため大衆の自覚を促そうとした頃に相当する。ゴルバチョフは、大衆からの投書(中国の今の微博のようなものだ)に基づく調査記事をマスコミにどんどん書かせ、それで社会の悪を明るみに出し、守旧派の抵抗を退けていったのだ。それで共産党指導体制の膿を出して、ソ連経済を再生させようという算段だったのだが、改革に対する保守層からの抵抗は強く、ゴルバチョフはその抵抗を排除するため民主化に民主化を重ね、ついには国内の統治メカニズムを壊してしまった。
習近平は官僚の腐敗を今、しゃかりきになってやめさせようとしているけれど、それもゴルバチョフ初期に重なって見える。今では中国諸都市の料亭は、官僚たちの酒宴がなくなり、閑古鳥。代わって秘密クラブの類が増えているそうだ。今の中国の情勢がどこまで1980年代のソ連情勢に重なっているかはわからないが、自分が関心を持っているのは、それほど大衆の意見を気にした場合、中国の外交がどうなるかだ。今まで中国政府がやってきたプロパガンダ――米国批判にせよ、反日・尖閣問題にせよ――を大衆が信じ込んで、政府が少しでも米国や日本に譲ると政府批判を強めるような、そんな危険性が出てきたのではないか。
ブッシュ大統領は、「民主制の国は戦争をしない」と言ったが、他ならぬブッシュ時代の米国はずいぶん戦争をしたし、古代アテネも国内は民主制でも、あれほど他の都市国家に対して高圧的、帝国主義的だった都市はない。法と制度に従ってものごとをちゃんと決めるのではなく、民主主義の名の下に、単に社会のムードに引きずられるだけのポピュリズム政権は、外部にとって危険なものだ。微博という怪物が日本に飛びかかってこないよう、またもし中国政府が微博の圧力に押されて軍を出してきた時、日本はちゃんと防げるような備えをしておかないといけない。
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