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2013-06-01 00:00
(連載)毛を吹いて傷を求めることなかれ(1)
角田 勝彦
団体役員
橋下徹大阪市長は、5月27日、日本外国特派員協会で会見し、米軍に風俗業活用を求めた発言を撤回し「おわびする」と述べた。これに対し、米国務省報道部長は、28日の記者会見で「一地方の当局者」の発言にこれ以上、コメントしないとの意向を示した。裏を読めば、政府要人の発言は問題になり得ることになる。河野談話や村山談話への見直し問題への警告である。「従軍慰安婦問題の本質は何か?」に関する伊藤将憲氏及び宮崎厚氏の最近の本欄への投稿にもあるように、いま「従軍慰安婦」問題などの是非を世界に問うことは、必要でも賢明でもない。5月17/18日付拙稿「歴史認識問題を考える」で説いたように「安倍政権は軍国主義」という誤解を生まないよう自重の上にも自重が望まれる。もちろんこれは悪意をもって我が国をおとしめようとする不当な主張をおとなしく受け入れよと言うものではない。
我が国が誠意を持って対処していることはPRすべきである。「従軍慰安婦」問題などの基礎は戦後補償問題になる。日本政府は、米国政府とともに「戦後補償はサンフランシスコ平和条約で解決済み」としている。条約締結国でない韓国と中国については、同平和条約は二国間条約で解決するよう求め、日本は日韓基本条約と日中共同声明でそれを果たした。「こうした各条約の枠組みが崩れた場合、日本と米国および他国との関係に重大な結果をもたらす」(クリントン民主党政権下の米政府の意見書)。
1965年6月の日韓条約(日本と韓国の国交正常化を規定した日韓基本条約のほか、日韓請求権経済協力協定、日韓漁業協定、在日韓国人の法的地位協定、文化財協定の4協定などを含めた総称)では、最終的に日本から韓国には無償3億ドル、有償2億ドル、民間協力資金3億ドルが提供された。これにより「完全かつ最終的に」個別請求権問題は解決された。相手国家に対する個別請求権は放棄された。
慰安婦に関する問題は、1970年代になって、旧日本軍が戦地の女性を強制連行し慰安婦にしたとする本(とくに、のちねつ造とわかった元陸軍軍人吉田清治の『朝鮮人慰安婦と日本人』(新人物往来社1977年))がいくつか出版されてから、大きく取り上げられた。1991年12月には日本政府に慰安婦補償を求めた初の損害賠償請求が提訴される(2004年最高裁で敗訴確定)。1993年8月には「(慰安婦は)本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、官憲などが直接加担したことがあったことが明らかになった」とする河野(官房長官)談話が発表される。1995年8月には「植民地支配と侵略を反省し、心からわびる」とする村山(首相)談話も発表された。(つづく)
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