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2013-06-02 00:00
(連載)毛を吹いて傷を求めることなかれ(2)
角田 勝彦
団体役員
1995年、日本政府は医療・福祉支援事業や民間の寄付を通じた「償い金」の支給などの元慰安婦に対する償い事業のために、民間(財団法人)からの寄附という形で「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を設立し、運営経費や活動資金を負担した。この基金は、計285名の元慰安婦に対し、一人当たり200万円の「償い金」を支給したが、2007年3月末で解散した。韓国や台湾では日本政府に対し「法的責任を認め、国家補償を行なえ」という主張を掲げる運動の影響が強く、アジア女性基金からの「償い金」を受け取ろうとする元慰安婦に対して、受け取るべきでないと圧力が加えられたため、悔いが残る結果だった。金だけではない。1996年には橋本龍太郎首相が元慰安婦に対しておわびの手紙を出し、2001年には小泉純一郎首相もおわびの手紙を各慰安婦に送った。
第1次安倍晋三内閣は2007年3月、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲による強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」との政府答弁書を閣議決定している。人狩りのような“狭義”の強制連行はなかったのだろう。2007年4月3日付けで米議会調査局の専門家により作成された「日本軍の『慰安婦』システム」と題する報告書も、いわゆる慰安婦問題の主要争点とされる「日本軍による女性の強制徴用」について「日本軍はおそらくほとんどの徴募を直接に実行はしなかっただろう。とくに朝鮮半島ではそうだった」と述べ、当時、下院に提出されていた慰安婦問題での日本糾弾の決議案が「日本軍による20万人女性の性の奴隷化」という表現で非難する日本軍による組織的、政策的な強制徴用は、なかったという趣旨の見解を示した。
しかし、米下院は2007年7月30日の本会議で、従軍慰安婦問題について日本の首相が公式に謝罪するよう求める決議を採択した。これは1月末に日系のマイク・ホンダ議員(民主)が提出したもので、「旧日本軍が若い女性に性的な奴隷状態を強制した歴史的な責任」を日本政府が「明確な形で公式に」認め、日本の首相が謝罪声明を出すよう求める内容である。実は、安倍首相が3月1日に、軍当局の関与と「強制性」を認めた1993年の「河野官房長官談話」に関連して「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実ではないか。定義が変わったことを前提に考えなければならない」と発言したのが、多くの米議員の反発を買って、可決に至ったとされる。
いま「従軍慰安婦」問題などの是非を世界に問うことは、必要でも賢明でもない。尖閣問題などと違い、我が国の立場を淡々と主張していればいい問題である。幸い我が国の国際的評価は不当な中傷で揺らぐほど弱くない。毛を吹いて傷を求めることなかれ。もっと自信を持って臨むべきだろう。(おわり)
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