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2013-06-03 00:00
(連載)イランの世俗的民主化を求めるフェイスブック運動(1)
河村 洋
外交評論家
2010年12月にチュニジアで始まったフェイスブック革命がエジプトからリビアに広まったことは記憶に新しい。現在、世界の公衆が「アラブの春」に失望する向きがあるのは、イスラム主義が台頭しているからである。この点から、イランの自由を求めるフェイスブック運動が世俗的民主主義を求めていることは注目に値する。様々な団体がフェイスブックで「ページ」や「グループ」を作ってイランの自由を求める運動を広めている。
ここで「ページ」と「グループ」について説明したい。フェイスブックには2種類のコミュニケーションがある。「ページ」とは少数の管理人たちが自分達への支持の意思表明として「いいね」クリックをした者に対してメッセージを送信する一方向のコミュニケーションである。他方で「グループ」では管理人と会員が相互にコミュニケーションを行なう。グループの会員として承認されれば、誰でもそこのウォール上に記事を投稿できる。両方のコミュニケーション方法を利用して、イランの民主化運動は雨後の筍のように次々と生まれている。こうした運動がチュニジアのように成功を収めるかどうかは知る由もないが、テヘランの神権政治がインターネット運動を管理できないことが明らかになっている。
チュニジアとエジプトの場合と違い、イランのフェイスブック運動が非常に世俗的な理由は、それが軍事政権ではなく神権政治に対して戦っているからである。「アラブの春」は学生達の緩やかなネットワークによって動かされたが、イランの運動はもっと求心力がある。これは重要な点であり、それは特にエジプトでは学生運動がイスラム主義者に乗っ取られてしまったからである。イランの運動ではレザ・パーレビ元皇太子が中心的な役割を果たしている。パーレビ家が王位に復帰することはないだろうが、ヨーロッパでも見られたように君主制は宗教的狂信主義や軍事独裁に対するビルトイン・スタビライザーである。
現在、パーレビ氏はアメリカのメリーランド州ベセスダを拠点に、欧米の市民社会に対してメディアを通じてイランの自由を支援するように訴えかけている。パーレビ氏がフェイスブックに開設した公式ページは全世界から15万8千近くの「いいね」クリックを受け、中でも最も多いのはインターネット検閲の厳しいテヘランからである。パーレビ氏自身の公式ページの他に、彼の支持者が立ち上げた「レザ・パーレビ皇太子ファン・ページ」まである。イランの民主化運動の支持者達はフェイスブックの「ページ」と「グループ」を通じて情報や意見を交換し、価値観を普及させ、全世界での連帯感を高めている。また、かなり多くの個人参加者がフェイスブックのプロフィール写真にパーレビ家の家族写真を利用している。(つづく)
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