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2013-06-13 00:00
政府・自民「海兵隊機能創設」へ気運高まる
杉浦 正章
政治評論家
集団的自衛権の行使、敵基地攻撃能力の確保と並んで、自衛隊に海兵隊的機能を持たせる組織改変構想が現実のものになりつつある。自民党は秋に政府が策定する新防衛大綱への提言に織り込んで、6月11日、首相・安倍晋三に提出した。安倍は前向き検討を約した。日米両国は、既に事実上の「海兵隊育成訓練」とも位置づけられる合同訓練をたびたび実施しており、10日から米国で始まっている大規模訓練もその色彩が濃厚だ。新設されれば、尖閣諸島領有を狙う中国に対抗する自衛隊始まって以来の戦闘機能の大転換となる。加えて、沖縄の基地負担の軽減につながる側面があり、重要な展開である。自衛隊の海兵隊化は幹事長・石破茂が昨年秋から唱え始めたものである。石破は二つの側面から海兵隊機能の必要を唱えている。一つは、島しょ防衛の側面だ。「日本には離島がたくさんあるが、なぜ海兵隊がないか。それは米国がやってくれるから。それでいいのか。日本で出来ることは、日本ですべきだ」という主張だ。二つは、沖縄の基地負担軽減策の側面だ。「海兵隊機能の導入で、日本全体で負うべきものは全体で負う。その観点の中にあって、普天間をいかに解決するかが今後、政権にとって極めて重要な課題になる」と述べている。
この発想の下に自民党の安全保障調査会が自衛隊への海兵隊的機能付与の必要を安倍に提言したのだ。海兵隊とは、極めて攻撃能力の強い戦闘集団であり、別名「殴り込み部隊」とも呼ばれる。主要国の軍隊はすべてこの機能を保有しており、日本でも旧軍隊では海軍陸戦隊がそれに相当した。世界最強の米海兵隊は、上陸作戦、即応展開などを担当する外征専門部隊であり、独自に戦闘機、戦車などを保有し、オスプレイや強襲揚陸艦により水陸両用作戦を行って、橋頭堡を築くことができる。要するに尖閣など島しょ防衛には不可欠の戦闘能力である。
既に日米間では事実上、自衛隊の海兵隊機能習得訓練が行われている。2月には米カリフォルニア州での日米共同訓練で、陸自隊員が海兵隊のオスプレイに搭乗し、敵に奪われた島を奪還する作戦を展開した。米海兵隊基地を敵に奪われた離島に見立て、オスプレイで陸自隊員が上陸し、前夜までに秘密裏に潜入していた部隊と合流、奪還する作戦だった。それより大規模で10日から米カリフォルニア州で始まったのが、離島奪還訓練「ドーン・ブリッツ」だ。島嶼(とうしょ)防衛の中核である陸自西部方面普通科連隊など約1千人や、海自のヘリ搭載型護衛艦、輸送艦、イージス艦などが参加している。中国は神経を尖らせており、事前に日本政府に合同訓練中止を申し入れた。防衛相・小野寺五典は何と「特定の国を対象にしたものではない」と、とぼけっぷりは十分の反論。「自衛隊の能力向上と日米での運用向上のため、訓練は予定通り進める」と実行に移した。
米中首脳会談で国家主席・習近平が「太平洋には米中を受け入れる十分な空間がある」と日本無視の太平洋2分割論を展開したが、その意を受けたかのように、中国潜水艦が南西諸島のわが国の接続水域を潜航したまま通過するという軍事挑発に出ている。明らかに中国は沖縄ー尖閣ー台湾ーフィリピンと続く第一列島線を突破して、小笠原諸島ーグアム・サイパンーパプアニューギニアに続く第2列島線にまで進出、太平洋制覇の海洋戦略を描いている。自衛隊の海兵隊化の実現は、まさにこの中国の膨張戦略に対する必然的な対応策であろう。米国はこの動きを歓迎している。米太平洋軍海兵隊の副司令官・シムコックは共同通信に「自衛隊は水陸両用能力の大幅な向上を目指しており、日本はこうした戦力を創設する力がある。米国、地域にとっても良いことだ」と発言している。全国紙の中には「無用の刺激」と主張する向きもあるが、海兵隊機能はごく普通の国防行為であり、中国が神経を尖らせるほど、抑止効果が生ずるのだ。石破の指摘しているように、海兵隊機能の付与は沖縄問題の解決策の1つにもなり得る。普天間基地の移設の政府方針は変わらないにしても、自衛隊が米海兵隊の役割を徐々に代替することにより、沖縄の負担の軽減には役立つからだ。政府は秋の防衛大綱で集団的自衛権、敵基地攻撃能力と並んで海兵隊機能を3大改革として打ち出すべきだ。
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