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2013-06-16 00:00
(連載)米中首脳会談と尖閣問題(1)
角田 勝彦
団体役員
国家主席就任から三カ月足らずで訪米した習近平主席が意図したのは外交上の成果により国内面で問題多い政権を強化することと思われる。しかし、世界を米中でとりしきろうという考えではないかと評判の良くないG2構想に代わり打ち出したその「中米新型大国関係」構想は、中国のサイバー攻撃や為替操作による不公正貿易、海洋安全保障など個別重要課題への具体的対処を迫るオバマ大統領の「(両国の)新しい形の協力モデル」提案で、いなされた。首脳間で合意した「協調」という枠の中で、7月の米中戦略・経済対話などでは、人民元の為替レート、北朝鮮の核問題などで米国から厳しい交渉を迫られることが予想されている。尖閣問題でも、尖閣や歴史問題に関する中国の主張を40分も一方的に述べ続け、何とか米国を自国側に取り込もうとする態度が顕著だった習近平国家主席に対し、オバマ大統領は、日本が米国の同盟国であることを指摘するとともに「外交チャンネルを通じて対話を目指すべきだ。東シナ海で(挑発的な)活動を行うべきではない」とたしなめた由である。
これに対し 習主席は「関係各国が責任ある態度をとって挑発をやめ、対話を通じて問題を解決する路線に戻ることを望む」と述べたという。すなわち、挑発しているのは日本とするとともに、日本が領有権争いの存在を認めるのが先決との認識を示した。最近、中国から棚上げ論が主張されているのも、この継続であろう。その後も6月15日には尖閣諸島沖の接続水域内を中国の海洋監視船「海監」3隻が航行している。尖閣問題に関する米中首脳会談でのオバマ大統領の発言及びその後の日本への会談模様説明(とくに13日の安倍首相への電話)は、米国の日米同盟重視の姿勢に変わりないことを示している。我が国3自衛隊は6月10日、尖閣を念頭に米カリフォルニア州サンディエゴで、米軍と合同の離島奪還訓練を開始した。このような地道な努力を重ねつつ、6月末からブルネイで開かれるASEAN関連外相会合などでの中国の出方を見守るべきであろう。
6月7、8両日に米パームスプリングズ(カリフォルニア州)で行われた8時間に及ぶ米中首脳会談では、米中の2大パワーによる協力関係(「中米新型大国関係」)を強調した中国に対し、米国は中国のサイバー攻撃や為替操作による不公正貿易、海洋安全保障など個別重要課題への具体的対処を迫る方針で臨んだようである。これらの重要課題で実質的な進展がなかったため米メディアは米中首脳会談についてかなり冷ややかな見方をしており、中国国内では「中米は新型大国関係を構築し、両国と世界人民に幸福をもたらすことで合意した」、「太平洋を越えた協力」(共産党機関紙、9日付人民日報)と会談の成果が宣伝される反面、個別の分野ではむしろ対米交渉が難しくなるとの見方が出ている。首脳間で合意した「協調」という枠の中で、7月の米中戦略・経済対話などでは、人民元の為替レート、北朝鮮の核問題などで米国から厳しい交渉を迫られることが予想されるためである。なお、この会談で両首脳は、米国が環太平洋連携協定(TPP)の交渉情報を中国側に提供し、北朝鮮を核保有国と認めず非核化を目指すことで一致した。
尖閣問題では、習近平国家主席が、約40分にわたり尖閣や歴史問題に関する中国の主張を一方的に述べ続けたり、1時間にわたりペーパーを読み上げながら同様の発言を行ったりするなど、何とか米国を自国側に取り込もうとする態度が顕著だったとされる。ただし、尖閣が中国の譲れない国益を意味する「核心的利益」だと表明したというのは誤報である。これに対し、オバマ大統領は、領有権について特定の立場をとらないという従来の立場を説明した上で、「(日中)双方の当事者は事態を悪化させるのではなく、外交チャンネルを通じて対話を目指すべきだ。東シナ海で(挑発的な)活動を行うべきではない」などと語ったとされる(領有権主張を強める中国の対日姿勢を非難し「米国の同盟国である日本が中国から脅迫されることをわれわれは絶対に受け入れない」と述べたとの報道もある)。(つづく)
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