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2013-06-26 00:00
通常国会は「強運安倍」の一人勝ち
杉浦 正章
政治評論家
参院の小政党が提出した首相問責決議案が、これほど場違いに感ずる例も珍しい。採決される見通しだが、与党に追いまくられた“腹いせ”の感じが濃厚で,今日閉幕する通常国会のすべてを象徴している。総じて国会は政府・自民党ペースでことが進み、野党は自分で掘った落とし穴に転げ込むような失策を繰り返した。もちろん首相・安倍晋三も弱点を垣間見せたが、かすり傷にとどまっている。安倍が「運も実力のうち」と自ら述べたように、目くるめくアベノミクスの展開と、ウイングを右に拡大した外交・安保戦略が、まさに時代の要請にマッチして、高支持率に反映した。このまま参院選になだれ込み、自公で過半数を獲得してねじれを解消すれば、長期政権も夢ではない。歴代長期政権を振り返れば、その共通点はいずれもタカ派首相であったことだ。最長の佐藤栄作を始め、吉田茂、小泉純一郎、中曽根康弘の4人とも、基本的にはウイングを左に広げるような物欲しそうな路線は取らず、日米同盟を軸とする安保路線を堅持した。安倍も吉田と佐藤が冷戦構造をフルに活用したように、極東における緊迫した情勢を反映した右寄り姿勢を取り続けている。中国国家主席・習近平は自らの政権維持の絶好の“道具”として尖閣問題を今後も活用し続けるものとみられる。北朝鮮もいったん確保した「核・ミサイル」を手放す流れにはない。
従って、極東は、一種の冷戦構造が維持されて行く方向にあり、安倍のみならず自民党はウイングを右に拡大せざるを得ない情勢に立ち至っている。安倍は、通常国会を通じてこの判断の下に発言をしており、集団的自衛権の行使、敵基地攻撃能力の保持など歴代の政権にとってはタブーであった問題をあえて提示して議論を展開した。憲法改正にも歴代自民党内閣以上に前向き姿勢を打ち出した。しかし、自らの靖国参拝や村山、河野両談話など歴史認識の問題に踏み込むことは“封印”するという柔軟姿勢もとっている。現状では中国、韓国、北朝鮮とは関係打開の糸口は見えないが、北にも中国にも密使をおくり、水面下でのアヒルの水かきには余念がない。さらに安倍は首相就任以来半年間で完全休日を数日しかとらず、土日を外国訪問に当てるという激務にあえてチャレンジしている。それも福島の原発事故を踏まえて安全な原発を売り込む流れを作っており、東南アジア、中東、北欧、南米などへの売り込みに成功しつつある。その原発再稼働も、厳しい原子力規制委員会に再稼働の判断をあえて委ねることにより、世論の批判をかわし、実現にこぎ着けるという戦略だ。秋以降は日本のエネルギー問題は「亡国の脱原発」から再稼働へと移行するだろうし、そうしなければならない。
そして政権を支える最大の柱が、アベノミクスの実行だ。株価の先行に引きずられるかのように、実態経済も復調の兆しを見せ始めている。都議選の圧勝が意味するものは、国民の支持率の高さが緊迫する極東情勢と景気・経済に支えられていることを物語る。アベノミクスの成否判明は1年後、2年後であり、野党の批判も空論になりがちだ。しかし、安倍に不安材料がないわけではない。まず第一にワーカホリック的な仕事ぶりが長続きするかどうかだ。人間体力には限界がある。ましてや過去に病気で倒れた安倍である。総じて疲れた表情は見せないが、時々青黒い顔をしている。相当疲れていることは確かだろう。その疲れが短慮となって現れたケースが、フェイスブックでの田中均批判だ。いくら元外交官だからといって、一民間人を「彼に外交を語る資格はない」と全面否定してはいけない。自民党青年局長・小泉進次郎が「個人の名前を挙げて反論、批判はすべきじゃない。首相への批判はあって当たり前で、受け止めながらやっていかないといけない」とたしなめたとおりである。
休養を取らないから、首相の立場を忘れての暴言となるのだ。さらに秋には消費増税の決断がある。4月から6月の経済状況を見極めて判断することになっているが、良好な経済指標は、消費増税にゴーを出さざるを得ない状況となっている。増税判断が支持率にプラスに働くことはあり得ない。一方で、もがけばもがくほど泥沼に引き込まれるのが、民主党だ。党執行部は総選挙惨敗の滓(おり)を引きずったまま、突破口を見いだせない状況に終始した。民主党代表・海江田万里の指導力欠如はいかんともし難い。安倍を「日米首脳会談がまだ行われていない」と批判して、取り消したことが物語るように、ルーピーさは元首相・鳩山由紀夫譲りだ。その鳩山は惨めの一言に尽きる民主党の支持率低下に、いまだに貢献している。やがて離党するようだが、イタチの最後っ屁のように「尖閣列島は中国から見れば、盗んだと思われても仕方がない」と想像を絶する発言をした。官房長官・菅義偉が「開いた口が塞がらない」と述べると、「もっと勉強して頂きたい」と手に負えない愚かさだ。落ち込んだ支持率がさらに下がり、参院選に直結するのは間違いない。維新の共同代表・橋下徹が慰安婦発言で馬脚を現わし、これを批判した石原慎太郎との確執が都議選大惨敗をもたらした。参院選にも尾を引く確定的な流れだ。こうして野党幹部にとって参院選は映画「処刑台のエレベーター」のごとくスリルのあるものになるだろう。
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