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2013-06-28 00:00
米国が直面する同盟管理問題
杉山 敏夫
団体職員
筆者は、昨年9月23日付けの本欄で「今日における尖閣情勢を考えるに、筆者は米国による拡大抑止について懐疑的にならざるを得ない」として、「第一に、(米国の対中)抑止の信憑性が十分ではない」「第二に、米国の対中抑止戦略は、米国内の事情等によって、遂行半ばにして見直しを迫られている」「最後に、拡大抑止の受益国であるわが国に対する世界的な評価が、実はわが国が望む状況には必ずしもなっていない」との3つの理由をあげた。この観点に立つとき、さる6月27日の韓国・朴槿恵大統領と中国・習近平国家主席の会談は、我が国の多くのメディアが懸念する「中韓による反日連携」とは別の側面において問題となるのではなかろうか。というのも、中韓首脳会談によってより深刻な難題を突きつけられているのは、実は日本よりも米国だからである。
今後の米国の対中、対韓、対日政策のあり方次第では、米国の韓国および日本に対する拡大抑止の信憑性は大きく揺らぐ可能性がある。先の米中首脳会談にて、オバマ大統領は習国家主席に対し「米国の同盟国である日本が、中国から脅迫されることは絶対に受け入れられない」などと述べたとされるが、これは米軍による日本への安全保障の「再保証(reassurance)」としての意味があっただけでなく、現状への挑戦国(中国)に対して抑止する側(米国)がその明確なメッセージを伝達したという点できわめて重要であった。
しかし、今回の中韓首脳会談によって中韓関係が強化されることとなれば、米国の対中政策はそのトーンを一段抑えたものとならざるを得ないのではないか。なぜなら、対中強硬路線で米国が臨むことは、米国のもう一つの同盟国である韓国からの「不信」につながりかねないからである。米国がこれを深刻に憂慮する動機は十分にある。そこには北朝鮮の核・ミサイル問題があり、また「アジア太平洋地域の平和と安全の要」として「一層強化する」ことを謳ったばかりの米韓関係がある。今回の中韓首脳会談においてはさらに、習国家主席が朴大統領による「朝鮮半島信頼プロセス」への支持を表明している。
以上を踏まえれば、米国は今、深刻な同盟管理問題に直面していると言える。日本との同盟関係の強化そしてその拡大抑止の信憑性を維持しようとすれば、米国の対中政策は日本の意向を強く反映する必要があろう。他方、この姿勢を鮮明に打ち出せば、もう一つの同盟国である韓国からの不信を招く可能性がある。これは、米国の対中戦略さらには北朝鮮の核・ミサイル問題への対応という点で決して少なくないコストを伴う。米国の同盟国は日本、韓国だけでなく、また米国による拡大抑止の受益国もこの二国のみではない。米国による日米、米韓二つの同盟管理のあり方は、米国のその他の地域における同盟管理と拡大抑止の信憑性にも影響を与える。オバマ政権は今回の中韓首脳会談をどのように見ているのだろうか。
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