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2013-07-26 00:00
核がなく、“うねり”とはほど遠い野党再編
杉浦 正章
政治評論家
「これではばらばらで馬糞の川流れだ。せめて固まる牛糞にならないと」と、再編志向の民主党ベテラン議員が嘆いている。自嘲(じちょう)気味になるのも無理はない。民主・維新・みんなの3党幹事長会談など野党再編の萌芽は生じているが、リーダーシップのある政治家が出てこない。勢力分野も衆院325,参院135の巨大与党に対して、野党は衆院155、参院107で、しかも細かく割れている。結集の政策理念がないわけではない。それは憲法改正派の糾合だが、最大の弱点は集まっても自民党別動隊になるだけであり、巨大与党へのアンチテーゼにならない。フレッシュな感じもなく、規模も小さい。せめて元外相・前原誠司あたりが中核になれば一定の動きにはなるが、本人はことりとも音を立てない。確かにさまざまな動きが出ることは出ている。参院選の大敗北がエネルギーになっていることも確かだ。本筋と言えるのは選挙当日の7月21日に行われた民主党の細野豪志、日本維新の松野頼久、みんなの党の江田憲司の3幹事長による秘密会談だ。明らかに野党再編に狙いを付けたものであることは、その後の動きを見れば分かる。細野は自らの辞任をてこに海江田の辞任を迫り、江田は堪忍袋の緒が切れたように代表・渡辺喜美と取っ組み合いのけんかを始めた。維新は石原慎太郎の求心力が衰え、大阪維新との食い違いが拡大傾向をたどる。
こうした党内情勢がどのように展開するかだ。まず民主党は代表のいすにしがみつく海江田万里が、反党選挙を展開した元首相・菅直人の首すら切れずに、さらなる能力の欠如を露呈、求心力はますます薄れた。海江田は参院議員会長・輿石東の支援を受けているが、その輿石が参院民主党の若手有志による参院副議長への祭り上げに直面している。敗北の責任者となれば、海江田も輿石も同罪であり、当然“一丁上がり”にしなければ「解党的な出直し」にはならない。海江田執行部は次第に追い詰められつつある。一方でみんなは、バトルに火が付いた。3党幹事長会談に渡辺が食いついて「今すぐに再編は無理だ。幹事長を辞めるのが筋だ」と江田の辞任を迫った。渡辺は陰険にも選挙期間中に自分と江田の演説に立った回数を比較する資料まで両院議員総会に提出して、江田を窮地に陥れようと画策した。江田は江田で「渡辺個人商店を株式会社にする。党改革を断行する」と一歩も引く気配がない。
まさに参院選大敗北は野党全体をメルトダウンさせつつあるのが現状だ。しかしこうした動きにとって致命的なのは、その基本的な性格が巨大与党に対する烏合(うごう)の衆であることだ。首相・安倍晋三は今が満月であり、消費増税、改憲、集団的自衛権問題、原発再稼働問題、環太平洋経済連携協定(TPP)など今後にひしめく難題は支持率を下げる要素にはなっても、上げる要素にはならない。また巨大与党には常に遠心力が作用する。政策の推進が反対勢力を強めるのだ。従って支持率は確実に下がるが、野党の期待するように一挙には下がらない。野党が自民党不満分子を含めた再編を行える状態には当分ならない。
野党再編への動きにとって致命的な問題は、糾合する旗印が政策的にも人材的にも欠如していることだ。憲法は糾合の核にはなっても、対決軸にはなりにくい。アベノミクス批判での糾合はあり得るが、国民の共感を得るのはその破たんが鮮明にならない限り無理だ。消費税は民主党・維新が賛成でみんなは反対。原発に至っては民意が衆参両院で再稼働を支持して勝負がついた。こうして政策や理念で一致点を見出すのは容易なことではないのが実情だ。
リーダーシップを発揮できる人物も今のところ姿を現さない。細野は自分が中心になれると思っているフシがあるが、幹事長半年間の実績が物語るものは、それほどのタマではなかったという現実だ。冒頭述べたように前原誠司か、野田道彦、岡田克也くらいしか核になる人物が存在しないが、まだ時期尚早とみてか、動き出す気配がない。政策でもリーダーシップでも核がないから「馬糞の川流れ」なのであろう。このままいけば、ただでさえ小さなパイをさらに小さく割って集まるということしか方策がないということになる。理念も政策も一致しない不満分子による小政党だ。政党同士が大きく糾合されるような“うねり”が見えないのだ。しかし、今後次の国政選挙までの3年間のスパンでみれば、自民、公明、共産の3党以外の政党名が存在し続けるかというと、これもまたおぼつかない。むしろ自民党から憲法や集団的自衛権問題で民主党に手が入って、分断され、これが再編に結びつく可能性があるが、動きは秋以降だ。
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