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2013-08-16 00:00
朝日の「加害者責任報道」の欺瞞性を突く
杉浦 正章
政治評論家
従軍慰安婦問題をめぐる朝日新聞の「誤報」が、周辺諸国との関係悪化の根源になったのは常識だが、同様の“手口”が8月16日付朝刊に如実に表れた。同紙は首相・安倍晋三が全国戦没者追悼式の式辞でアジア諸国への加害者責任に言及しなかったことを、1面、2面、3面ぶち抜きで報道したあげく、社説まで動員して追及した。とりわけ3面の「中韓広がる失望」の記事では、「加害者責任言及なし」があたかも両国に「失望と反発の声」を上げさせる結果となったかのように、仰々しく報じている。しかし、眼光紙背に徹して読めば、東京にいる編集者の「安倍叩き」の狙いとは逆に、直接的な中韓の「反応」がなかった事は明らかだ。そこには、公式反応がないにもかかわらずにあたかもあったかのように報ずる欺瞞(ぎまん)性がある。とにかく、最近の朝日は「安倍憎し」で固まってしまった。選挙民が衆院選挙、都議会選挙、参院選挙で安倍を圧勝させたことがまるで「けしからん」といわんばかりの、紙面構成だ。1面トップでは1993年の細川護煕以来踏襲されてきた加害責任に触れなかったと噛みつき、2面では「安倍色にじむ式辞」の中で安倍が自ら指示して文案を練ったことを解説。そして3面へと続く。しかし馬脚はここで現れた。
3面では、まず韓国の反応で、あたかも朴槿恵が安倍の式辞に直接的に反応したかのような記事構成をとっているが、朴は全く言及していない。このため朝日は「韓国政府には改めて落胆と懸念が広がっている」と主観的な表現をした揚げ句に、政府関係者に語らせるという“手法”に出た。政府関係者が「やはり本心はこうなのか、と韓国人は思ってしまう」と述べたと書いたのだ。これは東京からおそらく「何が何でも安倍発言の反応を書け」との指示が発せられて、特派員が苦し紛れに「政府関係者」なるものに語らせた記事に他ならない。しかし特派員は正直にも、韓国政府内部にはこれ以上の関係悪化を避けたい気持ちがあり、「朴氏は激しい非難の言葉を控え、独島や慰安婦といった言葉も避けた」とも書いている。一方、中国政府の反応に関する記事も全く同じパターンが見られる。公式な反応がないから、こんどは「外務省幹部」に語らせている。同幹部は「(これまでの政権との)大きな変化だ。今後の中日関係を考える上でも注目に値する」との懸念を示し、「一言で言えば、今日の日本側の対応には失望した」と語らせている。しかし、やはり特派員は中国政府の態度の変化にも言及して「中国政府は対日世論を過度にあおるような動きを避けようとする態度も示す。外交の選択肢を狭める可能性があるうえに、中国が日中関係を悪化させたとの印象を国際社会に与えたくないためとの見方もある」とも書いている。
要するに、中韓両国とも「加害者責任言及なし」への公式かつ直接的な反応が取れなかったことから、「政府関係者」や「外務省幹部」による非公式な発言による“作文”でお茶を濁さざるを得なかったのだ。見出しのように「中韓広がる失望」はまさに朝日の主観なのであって、公平性と客観性に乏しいことがあらわになっている。朝日は影響力が大きいから16日以降に両国の反応がある可能性は否定出来ないが、少なくとも朝刊の見出しと中身は一致しないのだ。
読売新聞が5月13日に維新共同代表・橋下徹の慰安婦問題発言に絡んで「慰安婦問題は朝日新聞の誤報を含めた報道がきっかけで日韓間の外交問題に発展した」と誤報に言及。翌日の14日付朝刊でも、慰安婦問題の用語解説記事の中で、「1992年1月に朝日新聞が『日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していた』と報じたことが発端となり、日韓間の外交問題に発展した。記事中には『主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した』などと、戦時勤労動員制度の『女子挺身隊』を“慰安婦狩り”と誤って報じた部分もあり、強制連行の有無が最大の争点となった」と2度にわたって「誤報」を指摘した。日本の2大新聞の一つが、相手紙に対して、「誤報」と断定することはよくよくのことであろう。しかし朝日からは何の弁明もない。今回の「加害責任大展開」の紙面構成も、他国の政府関係者をけしかけ、無理矢理に批判的な言動をとらせているし、今後もとらせようとしている。言論の自由はもちろん重視しなければならないが、中立公正を綱領で標榜する大新聞が、意図的に日中、日韓関係を煽りに煽って、時の政権批判へと結びつける。まるで選挙で原発再稼働反対などことごとく自らの論調が否定された事への、意趣返しのようでもある。一体どこの国の新聞かと言いたい。
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