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2013-08-24 00:00
予断を許さない朝鮮半島情勢
杉山 敏夫
団体職員
先月から今月にかけ、にわかに朝鮮半島情勢に変化が生じつつある。一見すれば、緊張緩和が進み、協調的な雰囲気が醸成されているように思われるが、それは長期的で持続的な安定をもたらすものなのだろうか。北東アジアという「地域レベル」での安定は、必ずしも国際政治における「システムレベル」から見た安定と同一でない。
確かに、南北朝鮮がさる8月14日、開城工業団地の操業再開に向けた合意書を採択した意義は決して小さくない。両者は、懸案であった「操業中断の再発防止」に合意した他、開城工業団地共同委員会を設置することや、同工業団地の国際化方案などの諸点についても合意しており、開城工業団地を中心とした南北朝鮮による交流/経済協力が今後活発化するだろう。23日からは、赤十字実務者協議が開催され、南北の離散家族問題の解決に向けた動きも進展するだろう。さらに北朝鮮は、現在進行中である米韓合同軍事演習に対する表立った反発も控えているようである。
だが、こうした一連の北朝鮮の協調路線と朝鮮半島の緊張緩和は、あくまで北東アジアという地域レベルの分析視角から捉えた現状であり、国際政治のシステムレベルから捉えた現状と異なることに留意したい。第一に、北朝鮮は依然として核開発を諦めておらず、世界的な核不拡散体制に対する重大な挑戦国であることに変わりはない。核やミサイル技術ないし兵器そのものの中東諸国への移転ないし輸出問題も軽視できない。第二に、北朝鮮の対外政策における真の狙いは、米国を交渉のテーブルに引き込むことである。北朝鮮の最終的な目的は「金体制の存続」であり、またそのために必要な米国との「平和条約の締結」である。イランやシリア、アフガニスタン等の問題を抱える米国にとっては、余程の交渉材料がない限り、北朝鮮側に譲歩することは有り得ない。そう考えれば、現在の北朝鮮による友好的とも見える対外政策はブラフ(はったり)である可能性は拭えず、それは将来的な対米交渉を意識したものである。
最後に、朝鮮半島情勢は米中関係の推移によって大きな影響を受ける。米国の国際政治全体における相対的な国力の低下は深刻だが、かといって米国が中国に対して大幅に譲歩するとは限らない。なぜならそれは、「自由」「民主主義」「人権」といった現在の国際秩序を支える諸価値に対する譲歩を意味するからである。加えて、米国の中国に対する譲歩は、米国の同盟国への誤ったシグナルを送ることになろう。北朝鮮の後ろ盾には、従来ほどの影響力はないにせよ、中国がいることは間違いない。米国が朝鮮半島情勢のハンドリングを中国に一任することは有り得るのか。むしろ米国はこれを良しとしないのではないか。以上より、一見友好的・協調的に見える現在の朝鮮半島情勢は、依然として予断を許す状況ではないと考える。
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