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2013-08-27 00:00
昭和天皇とマッカーサー
田原 総一朗
ジャーナリスト
「終戦のエンペラー」という映画が公開された。敗戦の日本の占領政策を敢行するためにマッカーサー元帥がやってくる。そして戦争責任者たちを裁く裁判に昭和天皇をかけるべきかどうかをフェラーズ准将に調査させる、というのが映画のテーマで、日本では企画するのが困難であろうと思う。
フェラーズは、東条英機、近衛文麿、木戸幸一など、戦時中のキーパーソンたちに直接会って、天皇の戦争責任を追及する。映画では、フェラーズが「もしも天皇が戦争犯罪のかどにより裁判に付されるならば、統治機構は崩壊し、全国的反乱が避けられないであろう。(中略)彼らは武装解除されているにせよ、混乱と流血が起こるであろう。何万人もの民事行政官とともに大規模な派遣軍を必要とするであろう」という覚書をマッカーサーに出し、そこでマッカーサーは、自分で決断をするために、昭和天皇と会見することにした。
映画では、マッカーサーと昭和天皇の会見の場面が最大のヤマバになっている。その会見で、昭和天皇は「政治・軍事の全責任を自分が負っている」と明言して、マッカーサーを感動させ、マッカーサーは天皇制の維持を決断したことになっている。実際は、映画とは逆で、マッカーサーが昭和天皇と会見した後に、フェラーズは覚書をマッカーサーに出しているのである。フェラーズは「日本の占領政策を順調に行うには、昭和天皇を裁判にかけるべきでない」と主張したのだ。おそらくマッカーサーも同じ意見だったはずである。
問題はその後だ。くり返し記すが、マッカーサーは、占領政策をうまくいかせるために、東条英機以下の14人をA級戦犯とし、天皇は裁判にかけないことにした。本来ならば、日本は独立した後に、日本政府として戦争の総括をすべきなのに、それをしないまま現在に到っている。このままでは現在もなお「戦後」がつづいているということになるのではないか。
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