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2013-09-02 00:00
安倍は来月早々に消費税実施判断へ
杉浦 正章
政治評論家
政治は全く素人の内閣官房参与の二人が政局絡みの口出しをして大失敗したというのが、政府主催の消費増税ヒヤリングの図式だ。首相・安倍晋三もあわよくばと増税回避の突破口を狙ったが、逆効果となった。7割が増税賛成だったが、数よりも説得力ある増税推進論が展開され、かえって増税への地盤固めとなってしまった。勝負はついた。あとは増税是認に向けて、企業の投資減税や法人税減税など財務省との“条件闘争”の段階に入り、月末か来月早々には安倍が8%増税への最終決断に踏み切るしかない情勢となった。近ごろの新聞記者は右往左往した去年の解散判断と同じで、全く政治の展望が読めなくなったようだ。判断する度胸もないのだろう。60人のヒヤリングを終えた段階の紙面で、「首相、消費増税決断へ」と踏み切った新聞は1社もない。それどころか、逆に読売が筆者の“友情ある説得”も聞かないで、「10倍返しだ」とばかりに社説で「来春の8%は見送るべきだ」とやってしまった。これもマスコミ界で孤立の様相だ。主筆のナベツネは振り上げた拳をどう下ろすのか見物だ。
もともと、有識者なるもののヒヤリングなどは、筆者が「馬鹿馬鹿しい」と書いたとおり、無意味なものであった。なぜなら肝心の政治の動向への視点が欠けているからだ。消費税という超ど級政策マターは、政治が判断すべきもので、民間人の意見を聞くような筋合いのものではない。そもそも消費税法成立の経緯を見れば、首相・野田佳彦が「党より天下国家だ」と、勇敢にも民主党の分裂まで巻き起こして3党合意を達成して、やっと通過させたものだ。政治家が命がけでやらなければならないほどの“政局銘柄”なのであり、ど素人が口を出すようなものでもない。そのど素人が官邸の首相側近なのだから安倍官邸も度し難い。しょっちゅう薄気味悪いにたにた笑いをしている官房参与の浜田宏一と、一見思考が深そうで、しゃべると浅い本田悦朗だ。必死になって「1%ずつの引き上げ」などという荒唐無稽(むけい)の説得をしようとするが、その主張をことごとく直接、間接に論破されたというのが、集中点検会合と称するヒヤリングの実態だ。両参与ともアベノミクスの“功労者”だが、もてはやされて舞い上がり、政治の火中のクリまで拾えると誤判断したのだ。
“政治音痴”の両者を諭すかのように説明すれば、消費税法案を撤回するには臨時国会で法案を成立させなければ間に合わない。新法案を成立させるためには1からやり直しとなる。1党の分裂を招いた法案を最初からやり直すことになるのだ。やる場合は、自民党は正式機関で審議することになるが、筆者の聞く限りにおいては幹部で見送りや“なし崩し型引き上げ”に賛成する者はいない。不可能だが、たとえ法案をまとめ得たとしても、国会審議がある。民主党や連立相手の公明党は黙っていない。前外相・玄葉光一郎は「党分裂までして通したのは、日本の将来を見通した戦略的判断だった」と述べ、反対だ。元官房長官・町村信孝も9月1日「あまり『内閣官房何とか』という人がたくさんいると、スピーディーな意思決定の逆になる」と痛烈に2人を批判。このところ難癖ばかり付けている公明党代表・山口那津男に至っては、「数字も良くなっている状況なので、このチャンスを逃すと『消費税の決断いつやるの?今でしょう』と心の中で思っている」と茶化しながらも、安倍官邸をいさめている。もちろん自民党執行部も反対だ。自民党副幹事長の中谷元も「機関決定が必要だが法案を作れるか、それを国会にかけられるか、といえば不可能だ。それにとても4月までに間に合わない」とテレビで発言している。また「消費税を変更すれば、1年後には倍返し、2年後には5倍返し、3年後には10倍返しになる」と流行語で安倍官邸を脅している。筆者が最初から指摘してきたとおり、見送り即政局の局面なのだ。安倍には見送りが達成できるほどの調整力も、エネルギーもない。
だいいち秋の臨時国会は何のための国会かと言えば、アベノミクスの仕上げのための国会だ。安部自身が唱えた3本の矢のうちの成長戦略が焦点となるのだ。消費税法案などを出せばそれにかかりっきりになって何も手が付かなくなる。審議も不毛の論議に終始するだろう。かえってアベノミクスつぶしの国会になってしまうのだ。世界各国はこれを見て「何も出来ない政治の日本に戻った」と判断、中韓両国は小躍りするに違いない。従って冒頭述べたように、勝負はついたのだ。議論は浜田、本田の大敗北で終息へと向かっている。予定通り8%の増税が4月から実施となる方向だ。もっとも安倍は、引き下がる以上は財務省の譲歩を勝ち取ろうとするだろう。それは激変緩和策だ。いかに8%へのショックを和らげるかだ。企業への投資減税や法人税減税が俎上(そじょう)に登るだろう。場合によっては所得減税も検討課題だ。また増税で来年度のGDPは4兆円は落ちる。これに相当する補正予算も必要不可欠になる。荒唐無稽な8%引き上げ反対論は、こうして終息の段階に入った。
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