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2013-09-08 00:00
(連載)シリア問題と外交政策立案(1)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
米国の外交政策の「形成と実行」について、元米国務長官のジェームズ・ベーカーが、「外交政策は、『原則』や『価値』を重視する理想主義と、『国益』を重視する現実主義の双方のバランスをとる必要がある。特に『国益』に関わっていない課題への対策について、国内の政治的支持を取り付けるのは難しい。当然、現実主義的配慮も必要になる」(『フォーリン・アフェアーズ』誌2006年10月号)と指摘している。この論に基づいて、今回のシリア問題を検討すると、次のようなことが見えてくるのではないか。
まず、「武力介入容認」動議が、英国議会下院において285対272で否決されたのは、キャメロン首相がシリアにおける「人道危機」に対して国際規範に基づく行動をとりたいとの理想主義的な主張をしたことが1つの要因だと考えられる。また、逆にオバマ大統領が「アメリカの核心的な国益」という言葉をインタビュー(8月28日、米公共放送)で使ったのは、それが国内の支持を取り付けるのに効果的な言葉の1つだと認識しているためだと考えられる。
現在の高度情報通信社会では、焦点化されている問題が、多様な価値観や環境にある人々によって異なる関心、優先順位というフィルターを通して発信・受信される。そのため、解決が難しくなる事例が増えているのではないだろうか。このため、オバマ大統領は、ブッシュ前大統領時代に「国益」を主張したネオコンの政策とは異なる理想主義を語る一方で、米国内の様々な関心、優先順位をできるだけ同じ方向に向けさせるため、「アメリカの核心的な国益」という言葉を使ったのではないかと考察できる。
ここで、シリア問題に関する政策形成について、理想主義と現実主義のそれぞれの観点について検討してみる。第一に、政策目的だが、理想主義は国際公共の観点から、人権保護や国際秩序づくりを重視する。一方、現実主義は、国益の観点から、安全保障やリスク回避を重視する。先に挙げた発言のみを取り上げると、前者がキャメロン首相、後者が労働党のミリバンド党首をはじめとする英国下院で反対票を投じた議員たちだと言えるだろう。第二に選択肢とその成果だが、理想主義の場合、政策を実施することは「象徴」であり、短期的な成果を強くは望まない。この点、現実主義は政策実施の即効的成果を重視する傾向がある。(つづく)
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