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2013-09-09 00:00
(連載)シリア問題と外交政策立案(2)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
今回のシリアでの化学兵器使用について、人道主義的理想主義の政策であり、懲罰的作戦であれば、軍の指令系統や化学兵器使用部隊を対象とした短期間の軍事行動となる。その作戦では、化学兵器の再使用を完全に防止することは出来ないだろう。しかし、米国が国際秩序の観点から語った言葉(例えば「レッドライン」)を、まだ簡単に無視することはできないという国際的認識は深まるだろう。
一方、現実主義は、根本的な解決策として、アサド体制の打倒を視野に入れて同政権の軍事力を徹底的に弱らせ、反体制派を勢いづかせる作戦をとるだろう。それにより、イラン、シリア、レバノンのヒズボラの連帯に楔を打ち込み、中東のパワーバランスを変えようとすると考えられる。その政策においては、イランの核開発の阻止にも役立つことを視野に入れた政策立案が取れる。これらを踏まえれば、今回、シリアへの武力介入を試みようとしているオバマ大統領の政策選択はどちらの傾向が強いのだろうか。ここで、ベーカー元国務長官の指摘に立ち返って検討すると、オバマ政権は、大義では理想主義を掲げている。
しかし、シリアの反応次第では、本格的に空爆により同盟国「イスラエル」の安全保障の確保、およびイランと対立する湾岸アラブ産油国との信頼関係の強化という「国益」をとる余地を残している。また、経済の回復途上にある米国にとって、原油、天然ガス価格の高騰、株価の下落というリスクと結びつくシリア問題の長期化は、望ましいものではない。このリスクを回避する狙いもあるだろう。1990-91年の湾岸戦争後、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領とベーカー国務長官は、ロシアと共同でマドリード中東和平会議を開催し、オスロ合意を取り付け、さらにヨルダン・イスラエル平和条約の締結への道を開いた。そして、マドリード会議では、出席しないと思われていたハーフェズ・アサド・シリア大統領(故人、バッシャール・アサド現大統領の父親)も参加した。
こうした先人の知恵に見習えば、オバマ大統領とケリー国務長官は、武力行使を短期間に止め、ロシアとの共同主催によるシリア問題国際会議「ジュネーブ2」の開催を積極的に推し進めるという政策選択も考えられるだろう。それは、武力では達成できないシリアの平和構築を一歩でも進め、「中東の安定」という米国の「国益」にもかなう政策選択だと言える。(おわり)
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