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2013-09-12 00:00
「無人機大国」中国にどう向き合うか
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
9月11日で尖閣の日本による国有化から一周年を迎えたが、それを前に「中国のものと思われる無人機が、日中中間線を越え、尖閣北方約100キロの空域で旋回し、これに対して空自のF15がスクランブル発進した」と統合幕僚監部が9月9日発表した。中国当局は、これが中国の無人機であることを認め「今回の行動は国際法に違反しておらず、今後とも同様の訓練を行う」と明言している。確かに国際法違反をしているわけではないが、挑発的行為を継続することを宣言したものであり、やはり重大である。実は、中国は「知られざる無人機大国」である。中国は、既に1950年代後半には、ソ連の無人機をリバースエンジニアリングしており、それ以来、無人機の開発を半世紀以上にわたって続けてきている。その結果、現在では、280機以上の無人機を保有しているとの見積もりがあり、質量ともに米国に次いで第二位である。その用途については、中国国防部は「当面東アジアにおける無人機の使用は偵察に限る」との公式声明を出しており、既に尖閣の写真撮影に用いている。
中国が尖閣に対して無人機を何らかの形で用いるのは、今回のスクランブル以前から既に始まっていることであり、今回の件によって大きくクローズアップされただけのことである。そして、中国国防部が「当面」と留保をつけていることからも推測できるように、将来は攻撃的な無人機を配備することも十分に考えられる。仮にそこまで行くには時間があるとしても、無人機の使用は、有人機による場合と比して、偵察の敷居を下げ、偵察活動の活発化に繋がるであろう。これは、出来る限り抑止する必要がある。そのために、日本は、真剣に対策を考えなければならない。
第一に、無人機の領空侵犯があった場合への対応である。自衛隊法84条は、領空侵犯への対応について「着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる」と規定しており、正当防衛に当たる場合以外は、原則として撃墜することを認めていない。しかし、国際法は撃墜を認めており、自衛隊法の規定は、極めて抑制されている。自衛隊法84条にいう「必要な措置」というのは、要するに、退去要請や警告射撃のことだが、無人機が相手では効果のほどは疑わしい。領海侵犯した無人機も含む軍用機を撃墜できるように、国際基準に合った形に自衛隊法を直ちに改正し、そういう対応を執ることを宣言すべきである。第二に、我が国も偵察目的の無人機の導入を急いで進めなければならない。そして、東シナ海において、偵察活動を活発に実施するべきである。それは、中国軍の動きを知るのに役に立つであろう。中国側は反発するだろうが、それで初めて、無人機での偵察を相互に自粛する交渉の可能性が出て来る。そうならなくとも、どうせ必要な装備なのだから、無駄になることは決してない。そして、第三に、長期的な検討課題として、サイバー攻撃能力を持つことも検討すべきであろう。中国が、無人機を攻撃目的にも使うようになったならば、無人機をコントロールしている場所を破壊する必要が出て来る。そのための対地攻撃能力を持つのは現実的でも適切でもなく、サイバー攻撃によって無力化するのがよいであろう。
今回の中国の無人機に対するスクランブルを、一過性のものとしてしまっては、中国の圧力を増長させるだけである。無人機を、偵察目的限定から、攻撃目的にも用途を広げて来る可能性がある。まずは、中国の無人機に無関心でないという強いメッセージを出す必要があり、上記自衛隊法の改正が喫緊である。
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