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2013-09-25 00:00
安倍、集団的自衛権導入を来春に先送り
杉浦 正章
政治評論家
政府自民党筋の情報を総合すると、首相・安倍晋三は今秋にもと想定していた集団的自衛権行使容認への憲法解釈変更を、来年春以降に先送りする方針を固めた。背景には、10月中旬の臨時国会では国家安全保障会議(NSC)設置法案など安保関連の重要法案がひしめいており、解釈変更に反対する公明党とのあつれきを拡大させることはまずいとの判断がある。さらに加えて、尖閣問題も膠着状態にあり、オリンピック開催に向けて“極東デタント”を模索することを優先させたものとみられる。集団的自衛権容認に向けて、安倍の当初の構想は、秋にも安保法制懇の報告を受け取り、年末の防衛大綱で解釈の変更を明示して、通常国会に「国家安全保障基本法案」を提出、「解釈改憲」への道筋を確立しようというものであった。ところが22日になって、政府・与党の空気ががらりと変わり始めた。石破が、まず国家安全保障基本法案について、国会提出が来年の通常国会以降になるとの見通しを示した。「公明党の理解もなしに、秋の臨時国会に法案を出せるという話にはならないだろう」と述べたのだ。
さらに集団的自衛権の行使容認に向けた公明党との協議について、協議開始は大綱策定後の来年になるとの見方を示した。これと口裏を合わせるように、安倍も9月22日のテレビで「憲法解釈変更の結論を年内に出すか」と問われ、「いつまでにということではなく、議論がまとまるのを見守りたい」と述べ、安保法制懇や与党内での議論を踏まえて判断する姿勢を改めて示した。この先延ばし方針について官邸筋は「あれもこれもと間口を広げすぎては、あぶはち取らずになりかねないので、首相と幹事長が調整したのだろう」と述べている。確かに臨時国会だけを見ても、NSC設置法案とこれに関連する秘密保全法案、さらにはアベノミクスを仕上げる産業競争力強化法案など、超重要法案がひしめいている。同筋は「これだけで年末までかかってしまう」と述べる。加えて、絶対平和主義の公明党代表・山口那津男が両手を広げて立ちふさがっており、早期解釈変更に突っ走れば、直ちに法案成立に影響が出かねない側面がある。
さらに加えて、中国や北朝鮮、韓国など周辺諸国の動向も、変化の兆しを見せてきている。北の核とミサイルのどう喝は米韓合同演習の終了と共に沈静化した。尖閣問題も一時のレーダー照射ほどの事態はその後発生せず、緊迫は高止まりのまま膠着状態で推移している。韓国との関係も徐々に解きほぐさざるを得ない情勢にある。安倍政権は内政外交に渡って多方面作戦を強いられてきているのだ。おまけに東京オリンピックの開催が7年後に設定されたことは、政権にとって必然的に「極東デタント」の必要を認識せざるを得ない情勢となった。周辺諸国と緊張状態を維持したままでオリンピックは開催できない。モスクワ・オリンピックがソ連のアフガン侵攻でボイコットされたように、オリンピックの成功は周辺諸国との協調が最重要であるからだ。
こうした情勢の変化をもとに、安倍は日本側から周辺諸国を刺激することは当面避けようという判断に傾いたものとみられる。ただ石破は「年末までに防衛計画の大綱は決めなければならない。これが一番急ぐ」と述べている。防衛計画の大綱の中核は集団的自衛権の導入にあり、それがなければ大綱を改正する意味がなくなる。しかし、閣議決定には公明党の賛同が不可欠であり、その説得をどうするかが焦点にならざるを得まい。従って、勢い公明党との調整は、公式な協議とは別に水面下に潜らざるを得ないことになるものとみられる。こうして安倍は、内閣最大の看板の一つを先延ばしせざるを得ない事態となったが、法制局長官を更迭し、安保法制懇をスタートさせて、解釈変更への環境は着々と整えており、あとは公明党が納得する“歯止め”をどう調整するかが焦点だ。政府部内では国家安全保障基本法で「集団的自衛権行使の国会承認」をより一層強調することや、NATOの集団的自衛権のように地域を限定する構想などが妥協案として考えられているようである。
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