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2013-10-05 00:00
米国の内向き化にどう対処するか
河東 哲夫
元外交官
この頃、世界の屋台骨が一つ一つ地に墜ちてきているような、「神々の黄昏」といった空気を感ずる。オバマ大統領がシリア問題で迷走したり、アジア訪問をキャンセルしたりして、十八番のTPP交渉年内妥結にも水をかけているからだ。こういうことは戦後何度もあったので、今回も米国は盛り返すだろうが、ワシントンでの足の引っ張り合いがあまりにひどい。米政権は加速度的に内向きと言うか、内政に専念せざるを得ない状況になっている。
中国は、米国が混乱しているからと言って、それを利用して拙速に動くことはしないだろう。今、下手に動けば、米国内を団結させてしまうからだ。それよりも心配なのは、日本の保守層かもしれない。国内の世論には「対米従属」だと揶揄され、ほかならぬ米国には時々煮え湯を飲まされるような思いをしながらも、日米同盟を擁護してきた人達のことだ。彼らが米国を過早に見限って、中国、韓国、北朝鮮に高飛車に出ることが心配だ。
それにしても、米国では今、多数の議員が全米税制改革協議会(ATR)代表のグローバー・ノーキスト(Grover_Norquist)なる野心家に操られている。選挙に当たって、ATRが求める増税反対の誓約書に署名し、見返りに票を出してもらっているからだ。ノーキストは、極端に「小さな政府」を求める人物で、差しあたってはオバマが第1期に導入した国民健康保険制度を葬ろうとしている。「小さな政府」だから、世界に対する関与も大幅に縮小して愧じないだろう。
オバマは、この議会の状況こそが、今最大の課題だと思っているのだろう。シリアの化学兵器問題では「迷走」を批判されたし、10月のアジア歴訪もキャンセルしたことで、TPPを年内に基本的に仕上げるという公約の先が見えなくなった。それでもあえて、ワシントン政治の行き詰まりに対処する。一年後の中間選挙で、議会と大統領の「ねじれ」を解消することが、彼の最大の課題なのだろう。日本は今キレるべきではない。中国が嫌がらせ以上の挙には出られない(跳ね上がりはあるかもしれない)だろうことを見透かして、米国をしっかりと支えることだ。オバマは、これまで同盟国から親身な支援を受けた経験がない。そういう状況では、同盟国を難事に支えようという気も起きにくいだろう。
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