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2013-10-12 00:00
(連載)米欧の国際関与消極化による危険な世界(1)
河村 洋
外交評論家
20世紀初頭の西欧は「白人の責務」を自負するほど自信過剰であり、それが帝国主義的資本主義の絶頂期をもたらし、ついには歴史上最も破滅的な両次の世界大戦にまで至った。しかし皮肉なことに、今日では欧米が責務を担うことに消極的で、自己否定的なために、世界が無秩序に向かっている。問題はオバマ政権による 超大国の自殺行為だけではない。イギリスでは下院がシリアに対する「保護する責任(R2P)」作戦を否決し、ブレア政権の自由介入主義を引き継ごうとしたキャメロン政権に大打撃となっている。ドイツでも、ギリシアとキプロスの金融危機救済を負担に感じる国民は、以前ほどヨーロッパの統合に積極的でなくなってなっている。
冷戦期には強固な大西洋同盟(NATO)が自由世界の礎であった。これによってアメリカの同盟諸国がアジア太平洋地域へ、そしてさらにその他の地域まで広がることになった。冷戦後、NATOはアフガニスタンにまで作戦範囲を拡大し、アル・カイダに代表されるグローバル化した脅威に対処するようになった。しかし現在はアメリカもヨーロッパも自らのハード・パワーとソフト・パワーを世界と地域の公益に活用することに消極的となり、世界から隔絶された自分達だけの幸福を追求するようになっている。欧米に何が起こったのか?
米英両国では、イラクとアフガニスタンでの戦争に対する厭戦気運が高まっている。党利党略と経済不況も両国が「世界の警察官」の役割を担う士気を低下させている。ロシアや中国のような専制国家やアル・カイダのようなテロ組織は、そうした厭戦気運を自分たちに有利なように利用している。そのような中で、ギリシア・ローマ文明の継承者で世界の普遍的な規範の形成者たるアメリカとヨーロッパが、国際公益を担う責務を放棄しようとしているのである。以下、欧米が指導的な役割に消極的になっている理由を国ごとに検証してみたい。まずアメリカについて述べたい。
シリア攻撃に対する国民の反対に鑑みて、バラク・オバマ大統領は9月10日にアメリカが「世界の警察官」として行動することはないと発言したが、アメリカでもパックス・アメリカーナが世界とアメリカ自身に利益をもたらすことをしっかりと認識する指導者はいる。マルコ・ルビオ上院議員は『ナショナル・レビュー・オンライン』誌への9月12日付けの寄稿で「アメリカが強大で積極関与することが世界にとって良いことなのは歴史が示す通りである。いかなる戦争にも勝てる軍事力を持つことが平和の維持に最善の方法であることも歴史が示す通りである。我が国の外交政策は同盟諸国との関係の維持と深化が至上命題であり、アメリカに味方する国が脅威を受けているならば、その国を支援するのは当然である」と述べている。(つづく)
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