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2013-10-12 00:00
(連載)シリア:わずかに見えた政治解決の明かり(2)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
「保護する責任」の概念は、1990年以降「破たん国家」が増加し、その中で人権侵害が行われてきたことで考えられた。こうした状況を踏まえ2001年12月に「介入と国家主権についての国際委員会」(ICISS)が発表した報告を基に国連で議論が積み重ねられた。そこでは国民を「保護する責任」は、第一義的にはその国家にあるとされている。そのため、国際社会はその国の保護能力の向上を支援することが期待されている。
リビアの場合、反体制派が形成した政府を国際社会が早期に承認したため、国際支援は「新政府」の保護能力を向上させることに注がれた。しかし、シリア問題では現在のところ、自国民への軍事攻撃を行っているアサド政権を支援するしかないことになる。また、国連を舞台に協議されてきた「保護する責任」は、国連安保理を通じ国連憲章7章に基づく集団的行動として実施されることになっている。したがって、シリア問題では、ロシアと中国の拒否的な姿勢が続く限り、「適切な時期」に「断固たる方法」でシリア市民を保護するための決議を通すことは難しい。
以上の点から、シリア問題では「保護する責任」ではなく、「化学兵器からの文民保護」の観点から政策が立案されることになる。ただし、オバマ大統領が言及した1925年のジュネーブ条約は化学兵器の国内使用について厳しく規定したものではないとも言える。したがって、国際規範を犯したとの観点でアサド政権に対応を迫るためには、安保理決議が必要となるだろう。
国際社会はシリアの化学兵器使用疑惑に関し、どうにかシリア、ロシア、そして中国から妥協案を見出せそうな状況になった。ここを糸口に、シリア問題の政治的解決を導き出せるかどうかの最初のハードルは、安保理決議案の作成である。そのカギは、地域機関であるアラブ連盟との密接な連携を保てるかどうかであろう。(おわり)
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