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2013-10-13 00:00
(連載)米欧の国際関与消極化による危険な世界(2)
河村 洋
外交評論家
次にヨーロッパについて述べたい。2008年の世界経済会議(ダヴォス・フォーラム)ではヨーロッパから「日本は国際舞台で忘れ去られた存在なのか」という問いかけがなされた。しかし私は「ヨーロッパのポスト帝国主義志向が全世界でヨーロッパへの関心を低下させている」ことも銘記したい。例えば、日本のメディアの間ではEUとヨーロッパの主要国よりも韓国の方がはるかに注目されている。ヨーロッパの政治力、経済力、軍事力、文化力を考慮すれば、これは何かの間違いではないかと思えるほど信じ難いことである。それはヨーロッパ諸国民が、世界の動向への責務を担うにはあまりにも自己批判的になってしまい、内向き志向が強まり過ぎた、ことが主な理由である。
アメリカとの特別関係を通じて大国の地位を誇示してきたイギリスさえ、下院ではシリア介入が否決された。きわめて重要なことに、保守党からもデービッド・デービス下院議員、クリスピン・ブラント下院議員、ジュリアン・ルイス下院議員らが、戦争の激化とロシアとの対決を恐れて、キャメロン政権の方針に反対票を投じた。『ガーディアン』紙のポリー・トインビー論説委員は8月29日付の論説で「シリア問題での下院決議は、イギリスが帝国主義的伝統とブレア政権以来の自由介入主義から決別したことを意味する」と述べている。しかし、アメリカと共に「世界の警察官」の役割を担うことを躊躇し、EUからも離れ、帝国主義的な伝統も拒絶するようなイギリスとは、何者になるのだろうか?
ドイツでも世界との関わりを拒絶する孤立主義が台頭している。先の選挙でアンゲラ・メルケル氏のキリスト教民主同盟が勝利したものの、連立を組んでいたネオ・リベラルの自由民主党が議席を減らしたのは、グローバルあるいはヨーロッパ域内でのボーダーレス・エコノミー への恐怖感のためである。ドイツ国民がメルケル氏を選出したのは、債務危機と若年者失業が重くのしかかるヨーロッパ大陸の中では比較的安定と繁栄を享受している自国の現状に満足しているからである。ドイツの有権者が自分達の祖国の偉大さ、強さ、地域への責任には無関心であることは、ギリシアとキプロスの金融危機に対する自己防衛的な反応からもうかがい知れる。ドイツがヨーロッパ統合に果たした歴史的な役割を考慮すれば、これは由々しきことである。
私は古き時代の「白人の責務」といった考え方を支持する気は毛頭ないが、現在の情勢から見てヨーロッパはグローバルな諸問題への対処でもっと積極的な役割を果たすべきであり、忘れ去られてはならない。欧米がそのように世界との関わりを忌避し、自国にばかり目を向けるようになることによる致命的な結末は、ロシア、中国、イスラム系テロリストといった挑戦者達の間で、アメリカもヨーロッパも世界の中で自らの主導権を確保できなくなったという認識が広まることである。「西欧の衰退」という認識が広まれば、こうした勢力はより強引に現在の世界体制やその価値観を否定する態度をとるようになるだろう。 その結果、欧米対その他の衝突は激化するようになる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が『ニューヨーク・タイムズ』紙に9月11日付けで投稿した論文は、アメリカあるいはより広く欧米全体の優位に対する明らかな挑戦である。(つづく)
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