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2013-10-16 00:00
(連載)米外交の敵は国内に在る(2)
鍋嶋 敬三
評論家
上院は与党の民主党、下院は野党の共和党が多数という「ねじれ」議会の下で統治機能が麻痺した米国の混乱は当分続く。短期的に一時しのぎの妥協で「政府再開」はできても、2014年11月の中間選挙で上下両院で民主党が優位にならない限り、構造的な問題として残る。選挙に向けて今後1年あまり、党派対立がますます厳しさを増すことは避けられない。日本でもねじれ国会の解消に至るまで「決められない政治」が続き、国益を大いに損ねた。
米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」を発行する外交問題評議会のリチャード・ハース会長は近著(Foreign Policy Begins At Home,2013)で「米国の安全保障と繁栄の最大の脅威は海外からではなく、国内から来る」と喝破した。同氏はホワイトハウスや国務省で要職を歴任した米国きっての外交専門家である。連邦債務が法律で定めた16.7兆ドルの上限に達しようとする米国経済の危機的様相はすでに予想されていたことだが、それに対応すべき政治の行き詰まりが危機を増幅している。
米国が民主政治の模範として世界に誇示してきた「チェック・アンド・バランス」の政治システムが想定を超えて機能不全に陥り、国内の課題と、それに対応すべき指導者や行政府や議会などの統治機構の対処能力とのギャップが広がった。米国にとって「直近の最大の脅威は米国政治システムに強まる一方の無能力さ」であるとハース氏は断じている。しっかりした国内基盤に支えられた「強い米国」だからこそ、潜在的な敵対国も米国との対決を避けて協調の道を選ぶ。経済的にも政治的にも国内基盤が弱ければ、米国の海外での影響力は低下する。米国の「拡大抑止」に依存する日本の安全保障にとって重大な問題である。
アメリカに処方箋はあるか? ハース氏は国内基盤を再建しない限り海外で指導的な立場に立つことは難しいとみており、厳しい財政規律や賢いエネルギー政策などによる「復興」という新たなドクトリンを掲げ、それが積極的な外交政策の基礎になると主張している。しかし、これも手っ取り早く成果が上がるものではない。とことん極まった党派対立を乗り越える超党派の努力に待つしか解決の道はない。20世紀後半には比類のない経済力と政治システムで世界を引っ張ってきた米国が21世紀前半においても指導的国家として存在しうるかどうかが、正しく問われている。(おわり)
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