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2013-11-03 00:00
日本にカジノを開帳してはならない
松井 啓
大学講師、元大使
超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(いわゆるカジノ議連)が与野党から150名の規模でカジノの解禁を目指して法案提出に動いていると報道されている。最高顧問には「美しい国」を創ると公言した安倍首相の他に、麻生副首相、石原日本維新の会の共同代表、小沢生活の党代表が名を連ねているとのこと。この議連は観光立国を目指して、カジノの経済効果は数兆円とも見込まれるので「アベノミクス」の起爆剤としての役割を期待し、東京五輪までに開帳したい意向であるとのこと。
誠に悲しむべきことである。もともと日本では賭博、博打、やくざ、暴力団、反社会的勢力は闇の世界のものであり、賭けごとは堅気者のやることではないとの社会的通念がある。日本には既にパチンコ、競輪、競馬、競艇があり、先進国でカジノがないのは日本だけだとの主張もあるが、カジノがないから文明開化が遅れていると肩身の狭い思いをする必要はない。カジノは武士道、額に汗し勤労を尊ぶ日本の生活文化にはなじまないものであり、先進国の中でも日本だけはカジノを開くべきではない。
短い赤鉛筆を持って競馬や競輪新聞を読みふけるおじさん達はさておき、朝9時からパチンコ屋の行列に缶コーヒーを片手に煙草を吸って座り込んでいる若者達、子供を自動車に置き忘れてパチンコに熱中して死なせた母親、パチンや賭けごとで損したカネを穴埋めしようと借金地獄に陥った主婦や会社の金を流用したサラリーマン、アメリカのカジノに大金を吸い取られた国会議員や若社長の話などを聞くにつけ、カジノで日本に明るい社会的影響が出るとは想像できない。外国でもカジノで幸福になった人の話を聞いたことはない。ロシアではマフィアの暗躍で反社会的影響があるとしてカジノは禁じられた。
それでは数兆円の経済効果とは何を意味するのだろうか。建設や雇用を別にすれば、それだけの儲けがあるとすれば、逆にそれだけ損をする人がいるということだ。マネーゲームが好きなアメリカの業者はこの道のベテランであり、儲かるとなればカネに糸目はつけない中国人も台頭するであろうから、外国人観光客を別にすれば(そもそも彼等はカジノでもうけるために日本に来るのではない)カネを吸い取られるのは主に日本人ということになるのではなかろうか。中毒にならないよう規制を作り、中毒になった人をリハビリする組織作りも検討するとのことだが、そこまでして解禁する意味があるのだろうか。
里山を保護し美しい国を造ることに情熱を燃やす人々、武士道復活を唱道する人たちは何処へ行ったのであろうか。ラスベガスのようなギンギンギラギラ輝くカジノのネオンサインは日本の精神的風土を壊すものである。目先の黒いカネや灰色のカネに目が眩み、射幸心を煽って町興し、国の活性化を図ろうとする貧困な発想の持ち主を我々はしかと精査する必要があろう。
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