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2013-11-17 00:00
PM2.5から日本と中国を守ろう
船田 元
元経済企画庁長官
中国本土ではPM2.5が猛威をふるっている。PMとはパーティキュレート・マター、すなわち粒子状物質の略語であり、2.5は0.0025ミリメーターを意味する。それは髪の毛の直径の約5分の1の小ささである。かつて日本では、高度経済成長期に深刻な公害を経験したが、その典型が四日市などの大気汚染だった。そのときの煤煙の粒子は、約10マイクロメーターだったという。今回の微粒子はその4分の1程度なので、人間が吸い込むと肺の奥まで入り込み、健康への影響はより深刻になるという。
中国のPM2.5は、黄砂や自動車の排気ガス、工場からの煤煙、質の悪い石炭を燃やす暖房装置からの排気物によって構成されているようだ。これらが空中で化学反応を起こしたり、太陽光によって光化学反応を起こしたりして、粒子がさらに細かくなるらしい。そのメカニズムは、まだ十分には解明されていない。PM2.5の影響は人体の健康のみならず、高速道路の閉鎖や空港での欠航を引き起こし、経済活動を阻害し始めている。経済成長が鈍化し始めている中国にとっては、一層厳しい影響が懸念される。
中国で働く日本人やその家族への影響も懸念され、偏西風にのって日本本土にも影響を及ぼし始めている。「一衣帯水」の関係にある日本と中国だから当然のことだが、どんなに日中関係が冷え込んでいても、この共通の懸案事項に対しては、是非協力すべきではないだろうか。
我が国はかつての深刻な公害問題を、高い技術開発によって克服してきた。今回のPM2.5問題についても、日本の技術力をもってすれば、十分に克服できるはずだ。これを日本国内だけで活用しても、ほとんど意味はない。中国本土で活用しなければ、根本的な解決にはならない。政治の障壁を越えて、日中が協力すべき課題がここに存在する。
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