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2013-11-25 00:00
(連載)憲法解釈の変更は、慎重に(1)
角田 勝彦
団体役員、元大使
安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)は集団的自衛権の行使容認を提言する報告書のとりまとめを来年4月以降に先送りする方針と報じられる。すなわち11月13日の安保法制懇の会合では北岡伸一座長代理がとりまとめた報告書原案(行使容認に向け憲法解釈見直しの必要性を明記)が提示されたが、憲法解釈見直しに慎重な公明党が、来年度予算案の成立を最優先に掲げているため、来年3月末までは与党内での議論の調整が付きそうもなく、報告書策定も4月以降になる見込みの由である。
この先送りは妥当である。そもそも解釈改憲には無理があり、安保法制懇提言を急いで、解釈改憲を強行しようとすれば、多くの混乱が生じよう。中国が、尖閣を含む防空識別圏を設定したような危険な動きもある現在、混乱は安全保障上有害だろう。年内決定を目論む安保戦略や新防衛大綱はもちろんのこと、10月3日の2+2会合で決まったガイドライン見直しなどについては、集団的自衛権行使容認を前提にせず、現在の安保法制の範囲内で予算面を含め着実な努力を重ねていくことが重要である。
北岡原案は「集団的自衛権行使は必要最小限度の自衛の範囲に入らないとしてきた内閣法制局の憲法解釈は誤りだ」と指摘している由で、各方面で今後かなりの反発が予想される。最大の問題点は、たとえば「公海での米艦艇の防護」や「米国へ向かう弾道ミサイルの迎撃」などで集団的自衛権の行使に踏み切らねば、日米同盟は崩壊するとして憲法解釈の変更を進言しているが、このような集団的自衛権の行使が憲法のどの条項から可能と解釈できるかの説明が乏しいことである。安倍首相は、9月12日に防衛省で開かれた自衛隊高級幹部会合で「(政府の憲法解釈が)現実とかけ離れた建前論に終始し、そのしわよせを現場の自衛隊員に押し付けてはならない」と訓示し、9月17日の安保法制懇会合では「いかなる憲法解釈も国民の生存や国家の存立を犠牲にするような帰結となってはならない」と述べた。
安保法制懇の提言により集団的自衛権行使へのお墨付きを得れば、「国家安全保障基本法」の制定(集団的自衛権の行使基準を定める)や自衛隊法の改訂を行い、来年末には日米がより迅速かつ効果的に共同対処するため日米防衛協力の指針(ガイドライン)を改訂する方針の由であるが、憲法解釈の変更はそれほど簡単ではない。正規の憲法改正手続きを踏むのであれば別であるが、「平和主義」は日本国憲法の基本原則の一つであり、安保法制懇の提言ていどでは、正当化のお墨付きにはなり得ない。(つづく)
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