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2006-12-23 00:00
注目されるブッシュ政権の対「北」政策転換
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
1年1カ月ぶりに再開された北京の6カ国協議が核問題の討議に入れず、何の進展もないまま休会入りしたことに失望感が広がっている。しかし、これは事前に十分予測されたことだ。むしろブッシュ政権が米朝直接協議に応じた点で希望を抱かせる展開となったことを歓迎すべきだ。
10月の北朝鮮の核実験と11月の米中間選挙の大敗の結果、ブッシュ共和党政権は対「北朝鮮」政策の転換を余儀なくされた。「直接交渉を拒否して孤立させたために北朝鮮を核保有国にしてしまった」という民主党の主張を容れて金融制裁をめぐる協議にも応じた。1月にニューヨークで継続されることになっただけでも成果だ。凍結された2400万ドルの半額は合法的な送金だったことが判明したと韓国情報は伝えている。
北朝鮮は「核保有国」の立場を主張した。実験強行の結果、交渉上の立場が強化されたかに見えるが、国際社会公認の「核保有国」はNPT(核不拡散条約)が「1967年1月以前に核爆発実験を実施した国」として定義している5カ国(米ロ英仏中)だけで、インド、パキスタン、イスラエルは「事実上の核保有国」であるにせよ、格別の特権が認められているわけではない。
北朝鮮が核保有国であろうとなかろうと、2005年9月19日の「共同声明」を参加各国が誠実に履行すればよいだけの話だ。北朝鮮が「朝鮮半島非核化」に同意していることに変わりない。問題は「約束対約束・行動対行動」という北の主張する原則が守られるかどうかだ。北が「一方的な核廃棄」要求に応じないのは当然である。金正日にすれば、先に丸裸になったら政権転覆されても反撃できなくなる。米朝間の相互不信はわれわれの想像以上に根強い。
日本のメディアは「北朝鮮はどう出るか」ばかりに注目するが、公正な立場から「ブッシュ政権がどう変わったのか。今後どう変わるか」にもっと関心を払うべきだ。朝鮮半島に残る冷戦構造解消を求める北朝鮮の主張は一貫して変わっていないからだ。「冷戦構造解消」とは朝鮮戦争に公的に終止符を打つ米朝間の「平和協定」締結であり、米朝国交正常化である。
日朝関係に好転の兆しは見えない。拉致問題にばかり固執し、「圧力」一辺倒の日本は米朝関係の「従属変数」にすぎず、日本独自で動ける余地は全くない。噂される小泉再々訪朝があるとすれば、「ブッシュが動き、小泉(安倍)も動く」時だろう。そうなる可能性は5分5分と見る。ネオコン一派の影響力を排除したとはいえ、「金正日総書記は大嫌いだ」と公言するブッシュ大統領が一朝一夕に“変身”できるとは思えない。
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