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2013-11-30 00:00
ケネデイ家の遺産に敬意と期待
船田 元
元経済企画庁長官
私が10歳の誕生日を迎えた翌朝、太平洋を跨いで初の衛星放送画面が、アメリカから日本のお茶の間に飛び込んできました。1963年11月23日のことです。子どもながらも、送られてきた画面の鮮明さに驚きましたが、実はもっと驚く事件が知らされました。そのナレーションは「初の衛星放送をお伝えするこの時に、日本の皆様にはとても悲しいことをお伝えしなければなりません。」といった内容でした。ジョン・F・ケネデイ大統領が暗殺されたという、ショッキングなニュースだったのです。ダラスの時間では22日午後12時30分頃、日本時間では23日明け方3時30分頃です。自分の誕生日に起こった事件ですので、より鮮明に覚えています。
ケネデイ大統領は、「ただの」大統領ではありませんでした。甘いマスクと絶妙な演説、そして世界を危機に陥れたキューバ危機から、不屈の精神で救ってくれた「世界の」大統領だったのです。その後日本では彼に憧れて政治を目指す人々が増え、あちこちに自称「何とかのケネデイ」が誕生しました。実は私の父は1961年、フルブライト留学生でアメリカに半年間滞在していましたが、大統領選挙に臨んでいる生のケネデイを見ています。帰国してからも興奮覚めやらず、何度も同じ話を聞かされていました。
それから丁度半世紀たった今年11月、新たなケネデイブームが日本で起ころうとしています。大統領のお嬢さんのキャロライン・ケネデイ女史が、いよいよアメリカの駐日大使として、本格的に仕事を開始しました。オバマ大統領の再選に多大の貢献をしたことがきっかけだったようですが、大統領と直接電話できる強みは何物にも代えられません。外交手腕は未知数と厳しい評価もされますが、ケネデイ家の遺産は既に日本を魅了して余りあるものがあります。
しかしながら、忘れてはならないことは、ケネデイ女史が代表するアメリカ合衆国は、日本に対してTPP交渉での一層の自由化を迫っています。日本と極東の安全保障を担保するために、集団的自衛権の行使を憲法解釈で乗り越えようとしている日本に、盛んにエールを送ってきています。日米間の懸案や摩擦に、今後は容赦なく巻き込まれる立場に彼女はいます。ケネデイ大使の持つ「大いなる遺産」に敬意を表しつつも、日米間の様々な問題解決に関して、実質的な貢献を果たしてくれることを、期待せずにはいられません。
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