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2014-01-05 00:00
中・韓の靖国参拝批判は内政干渉
松井 啓
大学講師・元大使
安倍首相の靖国参拝は絶妙なタイミングでなされた。欧米ともにクリスマス休暇中であり、それぞれの国民は年末セールに忙しく極東にかまけるいとまもなかったが、首相が政権2年目の冒頭で参拝したのには、十分な理由があった。そもそも如何なる寺院、教会、神社等に参拝するのかは個人の問題であり、首相の立場で参拝するか否かは国内問題である。外国がそれに対してとやかく批判するのは内政干渉である。また、何時参拝するか、元旦(年の初め)、建国記念日、終戦記念日、独立記念日、新政権成立時等についても、日本の伝統文化や宗教観に基づいて決定すべきであり、外国の鼻息をうかがう問題ではない。首相が新年を迎える前の政権成立2年目に、かねてからの懸案であった参拝をしたことを、どれだけ多くの、特に戦争を経験した世代が涙を流して喜んだかを認識すべきである。
先進各国の首脳も、戦争で散った英霊の施設に参拝しており、外国要人の訪問時には、訪問先がたとえかつての敵国であったとしても、記念碑に花束を捧げるのは習わしとなっている。靖国神社には1969年の創建以来246万柱が祭られており、1978年に14人のA級戦犯が合祀された。中国は1985年の中曽根首相参拝を契機に批判を始め、韓国は中国とは事情が異なるにも拘らず、日本の気配りする態度を見て、遅ればせながら中国に倣って、参拝非難を外交カードに使い出した。しかしながら246万人と14人の重さは比べるべくもなく、参拝は戦犯を讃えるためではなく、国のために命を奉じた英霊に尊崇の念を表明することであることは明白である。
参拝に対しては、中韓ともに強い怒りを表明したが、中国は国内に経済成長の鈍化、格差問題、共産党の掌握力の弱化等の問題を抱えているので、政府批判が暴発しないように対日抗議デモを抑え込んでおり、韓国も北朝鮮が暴走する恐れがある状況下で日本と動きのとれない対立関係に陥りたくなく、他方、日中韓間の経済関係は緊密化しており手荒な外交手段で経済に大きな影響が出ることは避けたいため、両国とも欧米諸国や国連に訴えて日本を孤立化する手段に出た。他方、欧米諸国は経済成長の鈍化、失業、格差の拡大、支持率の低下という問題を抱え、更にアフガニスタンからの撤退問題、シリアを始めとする中東やアフリカ情勢の不安定化などで手一杯であり、ロシアは遅れているソチ冬季オリンピック準備が焦眉であり、ことの内容はともかく、これ以上問題を起こしてもらいたくない事情にある。
米国は首相参拝に関し3パラグラフの短いステートメントを出し、冒頭で「日本は大切な同盟国ある」とした上で「近隣諸国との緊張を高めるような行動を取ったことに失望」を表明したが、最後に「首相の過去への反省(remorse)と日本の平和への決意を再確認する表現に注目している」と結んでおり、一部マスコミのように「米国が参拝を批判した」と決めつけることはできない。EU、露や潘国連事務総長(韓国人)も、北東アジアで対立が深まっていることに懸念や失望を表明したのも同様である。他方、アジアの中では、中(台湾)韓以外に批判している国はない。中韓の尻馬に乗って、右傾化だとか、軍国主義への復帰だとか、外交の閉塞かとか、と批判をしている日本の一部マスコミは国民に冷静な報道をする役割を放棄しているというべきである。欧米諸国に比べて、アジア諸国の国際的発信力は遅れていたが、最近の中韓印は国際メディア活用を格段に積極化している。日本も首相を中心としたソフトパワー強化の戦略を立てて、海外放送(ラジオ、TV)やインターネットの活用を通じた広報活動を展開して、参拝に関しては靖国神社の歴史や合祀されている英霊の意味について明確な説明をし、「中韓との対話のドアは何時でも開いている」ことを表明していくべきである。「地球儀を俯瞰する外交」、「積極的平和主義の外交」の第一歩を踏み出して、参拝は外交カードには使えないことを中韓に悟らせるべきである。
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