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2014-01-13 00:00
日本は、放射性廃棄物処理のイニチアチブを取れ
松井 啓
大学講師、元大使
日本の原子力発電は1966年に最初の商業用発電所が運転を開始し、特に1973年の石油危機以来増設が進み、原子力発電は燃料費の節約、電力の安定供給、温暖化抑制等の要件を満たす重要な基幹電源として位置づけられた。発電所数も50基を超え、米仏に次いで3位となり、原発の発電量も約3分の1となり、経済発展に貢献した。しかし、2011年の福島原発事故により全てが稼働を中止し、化石燃料の海外依存度は第1次石油危機当時を上回る88%となった。家庭の電気料金は月約1千円、2012年の貿易赤字は過去最大の6.9兆円に達し、日本全体で年3.6兆円(1日100億円)が海外に流出し、日本企業の輸出競争力は急激に低下しているとみられている。
ヨーロッパでは、1国で原発事故が起これば、大気汚染はすぐさま周辺国に拡散していく。そのことは、ウクライナのチェルノビル事故で明確であり、アジアでも中国の事故が貿易風で日本に飛来することは、黄砂やpm2.5汚染大気で経験している。世界には約500基の原発があり、中国に続いて開発途上国が石炭火力等による大気汚染予防及びエネルギーの安定供給の観点から原発を建設していけば、すぐ700基に達すると予測されている。原発は建設に10年、運転に40~50年、除染・廃炉に30~40年かかる。原発が稼働している限り、使用済み核燃料は増え続け、他方、稼動を停止・廃炉するとしても、放射性廃棄物の処理は必要である。原発から排出される放射性廃棄物が安全になるまでには10万年かかるといわれており、最終処分は地下300メートル以下に埋める地層処分が最も適切との国際的コンセンサスがある。フィンランド、フランス、スウェーデンなどはすでに地下埋没処分施設を計画、建設しているが、地元の不安を完全に払拭することは困難なようだ。
日本では、まず福島原発の汚染水処理が、場合によっては東京五輪に冷水を浴びせることになりかねず、日本の国際的信用にかかわる問題なので、早期に終止符を打つべきであり、次に原子力発電環境整備機構(NUMO)、国際廃炉研究開発機構(IRID)を整備して、廃炉・廃棄物処理体制を整備する必要がある。そのために技術と資金と要員を総合的に投入する体制を確立する要がある。日本の場合は地層が不安定であるので、安全な最終処理方法が開発されるまでは、中間貯蔵施設で管理すべきであろう。
原発を稼働させる前に放射性廃棄物の処分計画を作るべきであったが、結果的には「トイレのないマンション」を作つことになり、廃棄物の処理問題を先送りにして次世代に負担を残す結果となった。しかし、これは日本だけの問題ではなく、先進国、新興国、次々世代を含めた人類全体の問題であり、またそのような問題として対処しなければならない。日本は、欧米露等の安全基準、処理方法、実験、研究成果を結集し、共有する国際的組織設立のイニシアチブを取るべきである。因みに、国際原子力機関(IAEA)はゴミ処理には直接係わらない。福島原発の廃炉を実地現場として活用・応用するとともに、研究者の国際会議を主催し、実験場、ロボット、無人機等の研究・開発を担当するセンターを設立し、福島事故の災いを転じて国際的貢献の第一歩を踏み出すべきである。これこそ地球儀を俯瞰し、積極的平和主義を標榜しする安倍外交の実践となるであろう。
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