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2014-01-15 00:00
東京都知事選をドラマにしてはならない
松井 啓
大学講師、元大使
ジャーナリズムはドラマを欲するものであり、ドラマを仕立てるのがうまい。民間なら60歳(還暦)は心身ともにまともに機能しなくなる時期とみなして、定年退職することになっている。人口1千3百万人を抱える都知事選挙に、一旦引退した首相経験のある老人2人が「原発ゼロ」を旗印として表舞台に出てきたのは正常なことなのだろうか。
そもそも日本のエネルギー問題は日本の長期的な経済発展と安全保障にかかわる問題である。東京都は原発電力に最も多く依存してきたが、福島事故により原発は全て運転を中止している。彼等はこれからも原発ゼロで日本が発展できることを選挙の争点としている。1点豪華主義の短いキャッチフレーズで人心を捉えようとする劇場型人間が後期高齢者を担ぎ出し、またしてもジャーナリズムと相乗りでドラマを演出しようとの算段なのだろうが、都民と都議会は単眼的な中身のないフレーズに惑わされず、長期的、少なくとも4年後の東京都をどのようにしたいのかを冷静に考えるべきであろう。先進国首都である東京都の課題は山積している。高齢者看護、受け入れ施設、働く女性のための幼児受け入れ施設、身障者や社会的弱者の保護、エネルギー高騰による中小企業対策、高速道路の老朽化、通勤システムの安全円滑化、安心して走れる自転車道と駐輪場、青年の就職・再就職援護システム等々の問題である。これらの問題につき、特に若い世代が真剣に選挙に向かい合うことが望まれる。
美辞麗句ではなく、具体的にどのような都政をやって行こうとしているのかを、見きわめる必要がある。更に東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の招致は決定したので、これもドラマとしてはならない。五輪を最優先させて、国威を発揚させようという新興国的発想を止め、東京都全体を整備発展させ、住み心地の良い、質の高い生活を楽しめるように、長期的計画を立て、その一環として東京五輪を実施していく体制をつくる必要がある。50年前に東京で開催された第1回に比べて大人になった東京都を見てもらうべきであろう。
最後に、個人的な希望を二つ述べる。一つは、東京五輪の機会に合わせて日本にもカジノを開帳して経済活性化を図ろうとの動きがあるが、これは許してはならない。観光資源のほとんどないマカオやシンガポールのまねをする必要はない。カジノは闇世界とつながっており、日本の伝統的な風土に合わない。これを解禁する弊害は計り知れない。二つ目は、東京からの距離を測る起点となっている日本橋が経済優先で高速道路に覆われて久しい。是非東京五輪までにこの醜悪な構造物を取り外し、美しい日本橋を青空の下で眺めることができるようにして欲しい。
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