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2014-01-31 00:00
日印は、米、豪、ASEANとも重層的協力を
鍋嶋 敬三
評論家
安倍晋三首相のインド訪問(1月25日ー27日)は政治・安全保障、経済協力の強化で大きな成果を挙げたと評価したい。シン首相との間で「戦略的グローバル・パートナーシップの強化」と題する共同声明を発表したが、インド側の首相への厚遇と積極的評価が際立った。安倍首相は日本の首相として初めてインドで最も重要な建国を祝う「共和国記念日」の式典に主賓として招かれ、軍事パレードも観閲した。LOOK EAST政策(東方政策)で東南アジア諸国連合(ASEAN))との関係強化に努めてきたシン首相は「日本は東方政策の核心だ」(有力紙タイムズ・オブ・インディア)と持ち上げ、安倍内閣が12月に閣議決定したばかりの国家安全保障戦略、国家安全保障会議(NSC)の創設、日印防衛協力の強化を歓迎した。
谷内正太郎NSC事務局長とインド側カウンターパートのメノン国家安全保障顧問(閣僚級)との初会談が27日には開かれるという素早さである。谷内氏は1月17日にワシントンで米国のライス大統領補佐官(国家安全保障担当)、ケリー国務、ヘーゲル国防両長官らオバマ政権の外交、安全保障の首脳と異例の会談をし、米側の厚遇ぶりが目を引いた。インドとも首脳会談直後に実質協議に入ったことは、安倍政権のインド重視の本気さを示したものである。安倍首相の中東・アフリカ訪問(1月9日ー14日)に続くインド訪問は、同国がシーレーンをにらみ、ユーラシア大陸の中央に位置するという戦略上の重要性から設定された。
「国家安全保障戦略」では「わが国のシーレーン中央に位置、地政学的にも重要なインドとは、戦略的なグローバル・パートナーシップに基づいて海洋安全保障をはじめ幅広い分野で関係強化」をうたっている。インドの北辺は長大な国境で中国と接している。インド洋への進出を目指している中国に対してインドは警戒感を強めており、日印首脳会談を伝えたタイムズ・オブ・インディア紙は「馬が合ったシンとアベ、中国に狙い」と見出しを取った。首脳会談では鉄道事業に2000億円の新規円借款の供与、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)などの大型インフラ整備の前進に合意、日印通貨スワップの上限を150億ドルから500億ドルへ拡充など経済面の協力も成果を挙げた。
日印共同声明で地域情勢に関連して、国際法に基づく航行の自由、上空飛行の自由などの重要性を確認したのは、東シナ海(尖閣諸島)や南シナ海で国際的な慣行を無視した中国の攻撃的な行為をけん制するものだ。2014年もオバマ米大統領の訪日やASEAN、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、東アジア首脳会議(EAS)などが開かれ、地域のパワーバランスに影響を及ぼす。日本はインドとの関係強化の上に立って、地域安全保障問題で日印米、日印豪、日印ASEAN関係をより緊密化するよう重層的な多国間協力を推進すべきである。
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